ミネラルについて「チトクロームP450は諸刃の剣」

 前回、鉄酵素のチトクロームP450が解毒に効果的であることを述べましたが、もう少し詳しく説明しておきます。
 このチトクロームP450の約95%は解毒に働き、残りの5%は毒として働くと考えられています。例えばカネミ油症の原因といわれるPCBは、それ自体は大した問題の無い薬物ですが、体内に入って肝臓でチトクロームP450が働き、PCBに酵素を1個つけると毒性を持つようになります。タバコのタール中に含まれる強力な発ガン物質のベンツビレンも、それだけでは大きな害はないのですが、体内でチトクロームP450の作用を受けると、ほかの酵素との共同作業で活性の強い物質となり、それが細胞の遺伝子DNAと結合し発ガンの引き金になるといわれています。
 それとは逆に、フェナセチンという鎮痛剤は、それ自体は非常に弱くほとんど鎮痛効果はありません。しかし肝臓でチトクロームP450がフェナセチンに酸素をひっつけると、急速に鎮痛作用が高まってくるのです。これはよい方に働く例ですが、いずれにしても、チトクロームP450には功罪の両面があります。
 では、どのようにしてチトクロームP450の生産をコントロールしたらよいのかという問題が起こってきます。それは、食事の蛋白質の量によって変わってくるといわれています。低蛋白食だとチトクロームP450のできる量は少なく、高蛋白食にすると多量に生産されるのです。しかし、これは一概にどちらがよいとか悪いとはいえないのです。低蛋白食の場合、チトクロームP450の産生が少なく、薬を飲んだ場合、その影響が強く出ることになります。よく、「わたしは薬が効きすぎる」と言われる方がおられますが、そう言った人の多くは、菜食を主体にされており、チトクロームP450の産生が少ない人が多いと考えられます。つまり低蛋白質の食事により、チトクロームP450の産生が少ないためだと思われます。
 今までは「薬を滅多に飲まないから」とか、「菜食で体が敏感になったから」と説明されていましたが、その説明の生化学的な理由はチトクロームP450の産生が少ないからだと考えられます。これは動物実験でも確かめられています。ラットに睡眠剤を与えた場合、高蛋白食のグループは薬に対する解毒作用が強く出るため、薬の効果が早く失われ早く目覚めますが、低蛋白食のグループはチトクロームP450の活性が低下するため薬の効果が持続し睡眠時間が延長します。いずれにしても、低蛋白食のときは、チトクロームP450の産生が低いので、薬物を飲むときは注意しておかなければなりません。
 また医薬品、農薬、食品添加物などの薬物をとると、コレステロールの体内合成が高まります。このことをよく表しているのに「私はコレステロールが多いものを何も食べていないのに、血中コレステロール値が下がらない」と話す人がおられます。これは体内で異物に対してコレステロールが作られていることに起因していると考えられます。
 もう少し説明しますと、コレステロールには善玉と悪玉があってコレステロール食を与えると、善玉コレステロールが増えず、悪玉コレステロールのほうが増える傾向にあります。しかし薬物を与えたときは、善玉も悪玉もともに増えます。両方が増えるということは、何らかの体の防衛機構が働いていると考えられています。いろいろな異物、例えば薬物などは体にとってストレスとなります。このストレスに対抗するためにコレステロールの体内合成が高まると考えられます。
 コレステロールは、ストレスが加わったときに分泌される副賢皮質ホルモンの大切な材料です(ストレス第22回27回参照)。そのほかに性ホルモンや胆汁酸の原因となり、細胞膜の構成成分でもあるのです。脂溶性の生体異物の一部は、その代謝物が胆汁酸とともに体外に排泄されます。よって、より多くの胆汁酸の生成のために、コレステロールの合成が必要と考えられています。
 たとえ菜食をしていても、さまざまな薬物と無縁でいることはほとんどできません。コレステロールを多く含む食品を取っていなくても、こういうものが日々入ってきますので、体内のコレステロールの合成が高まるのであろうと考えられています。
 チトクロームP450は脂質代謝にもかかわっています。チトクロームP450は鉄を含む大切な酵素で、貧血症の人はチトクロームP450が生産されにくいことになります。それはチトクローム酵素はヘム蛋白であり、鉄を主要素としているため、貧血の人は鉄が不足しがちなためです。しかし、野菜の中で、チトクロームP450の活性が誘導されるものがあります。例えば、キャベツ、芽キャベツ、カリフラワーなどですが、これらに含まれる成分が一種の異物として働き、これらの植物を多くとるほどチトクロームP450が作られるようです。また、アルコールを飲んでも、チトクロームP450が多くできるのです。よく「酒を飲んでいると薬が効かない」という人がおられますが、その生化学的な理由はアルコールによってチトクロームP450が多くでき、それが薬の効果を抑制しているためだと考えられます。ちなみに、「酒は百薬の長」と申しますが、酒は飲みすぎれば脂肪肝になる可能性を助長しますし、すい臓を痛めたりします。たしなむ程度がよいと思われます。続く。

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