ストレスについて6「過度のストレスは遺伝する?」

 脳波は中枢神経の電気的活動で自発的に発生し、かつ調律的です。その波形は意識水準に極めてよく追従します。したがって、中枢神経系の活動水準を判定する重要な要素になります。精神の安定度合いは脳波測定で推測できます。
 脳波はδ波(2~4Hz)θ波(4~8Hz)α波(8~13Hz)β波(13~20Hz)γ波(20~40Hz)の発生の割合で表示されます。ストレスの大きい場合ほどγ波、β波の低振幅、速波の発生率が多く、精神の安定しているほど脳波は調律的となり、神経要素の同期化減少を呈し、δ波、θ波、α波の高振幅、徐波の発生率が高くなります。
 持続的ストレスによって、夜間のγ波、β波の発生率が高く続くことは発作的頻脈や頻脈傾向状態が続き、大脳のエネルギー需要が増加している状態と考えられます。本来は活動が休止する夜間の睡眠中も、休まずに大脳が活動しては大きな負担といえます。また、大脳自身がエネルギー不足と誤解した場合、どういう命令を体に発するのでしょうか。
 これを大脳への唯一のエネルギー源であるブドウ糖と酸素の供給について別々に考えると図のようになります。ブドウ糖では(A)血液中のブドウ糖濃度を増やす方法と、(B)大脳へ行く血液量を増やす方法があります。同様に酸素の供給でも(C)血液中の酸素濃度を増やす方法と、(D)血液量を増やす方法があります。(D)は(B)に加えて、(E)酸素を運搬する赤血球を増やす方法があります。(A)に従った体の反応が過食であり、それが原因の肥満や糖尿病の場合です。(B)に対しては高血圧と頻脈があります。(C)に対しては過換気症候群であり、(E)では赤血球増多症があります。
 また、精神的ストレスから逃れる一手段として、ストレスを加える者の排除を選択する危険性もあります。もし、大脳が精神的に弱く逃避行動をとるならば、それぞれ(A)から(E)に対応させ体に反対の行動をとるように命令を下すでしょう。これらを(A1)-(E1)とすると、(A1)は拒食症、(B1)は低血圧と徐脈、(C1)は喘息、(E1)は貧血となります。このように高血圧状態や高血糖状態を大脳が望むエネルギー供給の一方法であると考えるなら、熟睡で高血圧や糖尿病が改善されるのは当然の結果といえます。
 それではストレスは遺伝するのでしょうか? 例えば、高血圧の母体と子供の関係について考えてみましょう。遺伝的に高血圧になるラットは高血圧自然発症ラットといい、いろいろな実験に使用されています。ところが、遺伝的に高血圧のお母さんラットの妊娠中に降圧剤で血圧を下げてしまうと、生まれてくる子供は高血圧になりません。これはまさしく、高血圧という遺伝が遺伝子に組み込まれていないことを証明しています。
 遺伝的に高血圧であるラットは、母体にいるときの高血圧状態を覚えて生まれてきます。子供は母体の環境が最適と思い込んでいるのです。この母体からの情報こそ遺伝要因であり、生まれてくる子供が生活しやすいように、現在の環境状況を伝えているのです。母体が心のあり方を間違えると、子供は間違ったまま「愛」を受け取ります。胎児期でも出産後でも子供は母親の影響をそのまま受けるのです。
 よって遺伝的に高血圧なのも、生後に精神的ストレスから高血圧になるのも同じことです。つまり、それまで遺伝的に高血圧がない家系でも、母親が精神的ストレスから高血圧になり妊娠した場合、子供は高血圧になる可能性が高く、どこかで高血圧を治さないかぎり、以後家系的に高血圧が続くことになります。高血圧や糖尿病の発症のほとんどはこの種の環境遺伝です。自分の高血圧は遺伝とあきらめずに、環境を過度のストレス状態から適度なストレス状態にして、心を「忘却の彼方」へ解き放すことが、環境遺伝を断ち切り子々孫々までの悪影響から脱却する良い方法であると考えます。
 人は住む場所・食事・環境によっては高血圧でないと困る場合もあります。必要以上に気を使い過ぎないことが大切です。「真剣に考える」ことと「深刻に考える」ことの違いは大きいのです。

mn27