コリの生理学的解釈「全身の酸性化が糖尿病だ」

 前回ふれましたO-リングテストについて質問が多かったのですが、「水」のところで述べます。しばらくお待ち下さい。今回はコリを生理学的に解説します。
 コリにはカルシウムのほかにもう一つ糖尿病の時に不足するインスリンも関わっています。インスリンはブドウ糖を細胞の中に入れるカギのような働きをしています。血中の糖分が高くなると、インスリンが細胞に糖を取り込ませて、血糖値を正常に戻します。細胞に取り込まれたブドウ糖は、ミトコンドリアという細胞内小器官で酸化され、エネルギーとなります。ただし、インスリンがあればブドウ糖はどこからでも細胞の中に入るというわけにはいきません。ブドウ糖は細胞の中にある輸送体によって取り込まれるのです。少し専門的になりますが、その仕組みを説明します。
 細胞の表面をおおっている細胞膜にはナトリウム・プロトン・チャンネルという一種の出入口があります。プロトンというのは水素イオン・Hのことです。ところで、血液のpHは7.3~7.4の弱アルカリ性に厳しくコントロールされています。これが、例えば0.1でもくるえば人は死んでしまうほど厳密なものです。一方、細胞の中はpH6.8くらいの弱酸性です。
 細胞は血液によって運ばれてきた栄養素や酸素を受け取って、細胞内でエネルギーを生産しますが、細胞は血管から直接栄養分をもらうわけではありせん。細胞と毛細血管の間をうめている細胞間質液を経て、酸素や栄養を受け取っているのです。この細胞間質液のpHも普通は7.4くらいです。ところが、血液の流れが悪くなると、細胞間質液のpHは一瞬にして低下し6.8くらいになるといわれています。pHが下がるのはHが増えるからです。血管外の筋肉や他の細胞では、常に水と炭酸ガスを放出しています。この水と炭酸ガスは反応してHとHCOになります。Hが多いと酸性になり、少ないとアルカリ性になります。
 血液のpHが弱アルカリ性に保たれているのは、血液中のヘモグロビンの働きによるところが大きいといわれています。ヘモグロビンはヘム(鉄)とグロビン(タンパク質)の結合したもので、酸素の運搬役です。肺や皮膚から酸素を受け取りヘムの部分で酸化鉄として保持し、各組織でOをHと置き換えることにより、Oを与えHを回収します。これがヘモグロビンの酸化還元現象で組織レベルの恒常性維持機構ということになります。Hが多くなると、その場所は酸性に傾きます。血液が常に弱アルカリ性に保たれている背景には、ヘモグロビンの酸化還元がうまくいっていることに起因しているのです。このほか重炭酸イオンやタンパク質なども関わっています。
 しかし、血管の外の細胞間質液にはヘモグロビンがなく、そのためにpHを維持する働き、つまり緩衝作用が弱いのです。血液の約5分の1の緩衝作用しかないといわれており、細胞間質液のpHは変わりやすいのです。細胞の新陳代謝の結果できた炭酸ガスは、酸素濃度と炭酸ガス濃度の差により、ヘモグロビンと結合し、血液の流れが良ければ肺へ運ばれ呼気として排出することができます。
 ところが、血流が悪いと炭酸ガスが滞って細胞間質液が酸性になるのです。本来は細胞内はHが多くて酸性、細胞の外つまり細胞間質液は少なくてアルカリ性というのが正常な状態です。それが血流が悪くなって細胞間質液が酸性になると、細胞内外の濃度差がなくなり、細胞の外に多いナトリウムが細胞の中に入り、細胞の中に多いHが外に出るというナトリウム・プロトン・チャンネルがうまく働かなくなります。
 そこで吸い玉やマッサージ、あんま、鍼灸などによって血液の流れを良くすると、細胞外のHが減り、また炭酸ガスが運び去られて細胞間質液がアルカリ性を回復します。そうなると、インスリンが働きナトリウムが細胞の中に入り、Hが外へ出ていきます。そして細胞の中にあったブドウ糖の輸送体が細胞表面に出てきて、ブドウ糖を取り込むようになるのです。
 つまり、細胞間質液が酸性になり酢酸が産生されるとインスリンがあっても、ナトリウム・プロトン・チャンネルがうまく機能せず、細胞がブドウ糖を取り込めなくなり、十分なエネルギーが産生できません。このエネルギー不足がカルシウムを筋小胞体に戻せずコリを助長するのです。例えば長い時間正座していると足がしびれてきます。これは足の血管が圧迫されて血液が通わなくなり、局所的に酸性化して糖尿病状態になり、エネルギーがつくれなくなるからです。糖尿病の人ではこれが全身的に起こるためにエネルギーが不足しがちになり、疲れやすくなると考えられます。疲れたらあん摩器やお風呂などで血流の改善に心がけましょう。次回は心臓と慢性筋肉疲労とエネルギーについて述べる予定です。

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