産経新聞「家庭と健康」に顎関節症についての記事掲載

■顎関節症
 顎関節症は、さまざまな原因から生じ、病態としていろいろな面を持つ、額関節を中心とした病気です。顎関節症の3大症状は、「口を開けると顎が痛い」「顎がコキコキ、ギシギシと音がする」「口が大きく開けられない」といわれています。また、この病気は、頭痛、肩こり、首の痛み、背中の痛み、めまい、腰痛など顎以外のところに悪影響を及ぼすことがあると言われています。
 確かにこうした症状は、他の病気が原因したり、他の病気と複雑に関係したりしていて、顎関節症とは断定しにくいものがありますが、もし原因不明の肩こりや頭痛があったならば、顎関節症が関係しているのでは─と、疑ってみることも大切です。
 この病気の主な原因は、第1に不正咬合、つまり歯の不正な噛(か)み合わせにあります。これは噛み合わせがズレ、顎の関節がズレているのです。そりため顎関節症を「顎ズレ病」とも呼んでいます。
 そこでなぜ、不正咬合が生じるのかといいますと、ヤエ歯やラングイ歯のような歯並びの悪さや、虫歯の治療で詰め物・歯にかぶせる物のバランスが悪いときに、ちょっとした不快感でも無意識に自分から顎をズラして噛むようになるためです。
 また、歯を抜いたまま放置しておくと、その抜けた歯の機能を補おうと残った歯が傾いたり、伸びたりして無に理噛み合わせようとしてします。こうした無理が不正咬合を生じさせるのです。
 時には入れ歯を入れて何年かたち、それらがすり減った場合でも生じます。虫歯の放置、歯の治療の中断は大きな原因のひとつといえるのです。また、現代の食生活のソフト化の傾向も顎の機能発達にはマイナスに働いていると考えられます。
 次に原因その2として最近、現代人が抱える多種多様な心理的ストレスがクローズアップされる傾向にあります。これはストレスが「くいしばり」として顎の関節に常に異常な負荷を生じ、顎を動かす筋肉や神経に緊張を起こし疲労を蓄積させるからです。
 歯は非常に敏感な器官であり、前歯で約1グラム、奥歯で約5グラムというほんのわずかな力を感じとれるものなのです。ちょっとしたバランスの崩れにも微妙に反応し、体全体のさまざまなところに不都合を生じてしまうわけです。
 顎関節症の治療は、保存療法として、スプリント、バイトプレート、マウスピース、アクチベータ、咬合調整…などの咬合治療が主体を成し、補助的療法として、消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、精神安定剤、マイオモニター通電療法やバイオフィードバック療法などの理学療法やカウンセリング、運動療法などを行い、それでもダメなら、関節頭剥離手術や顎関節頭洗浄手術などの外科的手術が行われています。
 しかし、こういった保存療法や外科的療法の治療で顎関節症が治ったかに見えても、また再発する場合がしばしばあります。顎関節症で問題になるのはこのケースです。つまり現段階において、これという決め手となる治療方法がないのです。
 このような再発のあるケースにおいて、昨今、足首のねんざや仙腸関節の異常、むち打ち症、肩こりなどが、顎関節症に影響しているという学会報告もありますが、何よりもその原因をつくらないことが大切です。
 噛み合わせに関しては(1)歯並びを治す(2)片噛みをしない(3)寝癖やほおづえに注意する(4)歯の治療を途中でやめない(5)食事の際は、よく噛んで食べる(6)歯の定期検診を受ける─などです。とにかく固い物でも嫌がらず、よく噛んで、顎を鍛えることが大切です。

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