アトピーについて「ステロイドは自分でつくれ!」

 前回、ヒスタミンがかゆみの原因になることをお話ししましたが、食べ物の中にもヒスタミンを作るものがあるのです。ヒスタミンがアトピー性皮膚炎の原因ではありませんが、これが多くできればかゆみが強くなるのです。ヒスタミンは腸管の中でもある程度つくられます。特にアミノ酸のヒスチジンから、腐敗菌の作用で作られるようです。腸管アレルギーにこれがかかわっているといえます。植物の中ではナス、トマト、ホウレン草などにヒスタミンが多く含まれるので、かゆみのある時は避けたほうが賢明と思います。
 しかし、野菜類にフラボノールが含まれていて、これには抗ヒスタミン作用があり、かゆみのある人は野菜をジュースにしたり、スープにしたりして取ると良いようです。野菜ジュースにはカロチンやビタミンCがあり、特に、イチョウの葉はフラボノールを多く含有しているのでイチョウの葉を煎じて服用するのは効果的のようです。
 いまの食べ物には農薬や食品添加物などの混入があり、空気中にも汚染物質が充満しており、これらが体内に入ってきたら、体は解毒しなければなりません。そのために必要な栄養素がビタミンA、B群、C、Eなどです。これらの微量栄養素の必要量はますます増えているのに、農薬や化学肥料を用いた農業で地力が低下し、作物に含まれるビタミンやミネラルの量は減少しており、アレルギー疾患ばかりでなく、多くの生活習慣病が起こる原因の一つといえます。例えばビタミンAは肝臓に貯蔵されていますが、目を使用することによって減少します。特にコンピューター時代の今日においては、電磁波障害ばかりでなく、化学物質が入ってきてもどんどん消費されるのです。
 また、ビタミンAは粘膜の強化にも大いに働きます。アレルゲンは粘膜を通って体内に入ってきますので、粘膜がしっかりしていて守っていたら、アレルゲンは入り難くなります。それには細胞の膜や細胞と細胞の間の結合組織を強化すればよいことになります。粘膜を強化するにはビタミンAが、また結合組織を強化するにはビタミンC、コンドロイチン硫酸が必要です。カロチンはビタミンAの前駆体で、人参に多く含まれています。野菜ジュースを作るときは、人参をベースにして作ることをお勧めします。とくにβ-カロチンは腸で2分子のビタミンAになり、効率の良い供給源といえます。
 ビタミンB群の中では、とくにパントテン酸が大切です。パントテン酸不足のときの症状は、腸管アレルギーの症状と類似し、いらいら、食欲不振、消化障害、頭痛、抑うつなどが起こります。パントテン酸は白米にすると著しく減少しますので、玄米か麦飯にするのが良いと思います。雑穀を摂取すると、これらのセンイから腸内細菌がパントテン酸を合成します。パントテン酸はステロイドホルモンを作るのにも一躍を担うので必要です。
 アトピー性皮膚炎でステロイド剤の長期使用はアトピーを治りにくくしかねません。いまのステロイド剤はよく浸透しますから、皮膚だけでなく血管にも入っていくのです。血液中にステロイドホルモンが増えると、フィードバック機構が働いて、副腎皮質はホルモンを作ることを止めてしまいます。いったん副腎がホルモンを作るのを止めたら、回復するのに1カ月から1年かかるといわれます。よって、ステロイド剤を止めると、生体は副腎皮質がホルモンを生産し難くなっているため、症状がいっぺんに悪化して見える免疫反応に悩まされることになりかねません。しかし、それを乗り越えなければ本当に良くはならないようです。つまり、ステロイドホルモンは、外から入れるより、体が自主的に作ることが大切なのです。
 アメリカの栄養療法では、アレルギーはストレス病だという説が大勢を占めつつあるようです。ストレスというのは精神的なものばかりではありません。農薬や食品添加物のような化学物質、過労、睡眠不足、過食、暑さ、寒さなどもストレスになるのです。こうした精神的、肉体的ストレスに対して、体の方では副腎がステロイドホルモンを作って対抗しているのです。しかし、ストレスが多すぎれば、このホルモンの合成が間に合わず、ついに疲弊してしまいます。その状態がアレルギーだという説です。
 体の中ではステロイドホルモンはコレステロールからいくつかの段階を経て作られます。この過程でビタミンEやC、パントテン酸が必要であり、これらが不足しないように補ってやることが重要です。一番大切なことはストレスを除くことですが、それができない場合は、これらの栄養素を十分に取って、ステロイドホルモンを合成して対抗しなければなりません。
 アトピー性皮膚炎では環境の改善が重要ですが、家庭の事情でこれができないときは、やはりこれらのビタミン類を補って、ステロイドホルモンの合成を盛んにしてやることも重要なことです。外からステロイド剤を塗ると、細菌感染を誘発、増悪させる要因になります。アトピー性皮膚炎はかゆいから、体をひっかきます。そうするとステロイド剤で抵抗力が落ちていますから、普通の人なら何ともない細菌や真菌類に感染し、これがだんだん広がったり、また他に使用した薬の副作用が加わり、症状をより複雑にします。
 赤ちゃんはささいなことがストレスになり無意識に体を引っかきストレスの発散を促します。アトピー性皮膚炎を防ぐには、まず母乳で育てることです。母乳なら絶対にアトピー性皮膚炎にならないとはいえませんが、発生率は抑えられるし症状も軽いようです。母親は少なくても出産の3カ月前から、子供は授乳期に卵白、牛乳、大豆などのアレルゲンとなる食べ物を控えることも大切なことだと思います。離乳はできるだけ遅らせ、母親の免疫力を持続させスキンシップを大切にし、玄米、麦飯などパントテン酸やビタミン類を多く含む食事で、アレルギーを予防したいものです。

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