癌について「ガンはミネラルでアポトーシスに」

 現代医学ではガンは(1)イニシエーション(突然変異) (2)プロモーション(増殖) (3)プログレッション(悪性化)の3段階を経て悪性のガン細胞ができると考えられています。
 (1)や(2)の段階で細胞の増殖が起こると、組織は過形成の状態になります。しかし、通常は多く増えた細胞数を減らそうとしてアポトーシス(細胞の自死)機構が働き、異常増殖した細胞は死滅していくため、ガンは起こりにくいのです。しかし、現実にガンは起こっており、ガンになる細胞は、「アポトーシスを巧妙に回避する仕組み」を獲得した細胞か、もしくは免疫細胞の狂いであると考えられています。
 また、異常増殖した細胞はアポトーシスによって死滅し減少しますが、すると今度は生体がアポトーシスを抑制して、細胞増殖を促進させる状態になるのです。このときはガン化が起こる確率が高くなります。このようにアポトーシスの研究によって、ガンの発生は細胞の異常増殖だけではなく、アポトーシスの制御の異常という、大きな枠組みの中で考えなければならないことが分かってきました。
 現代医学では、ガンの治療は外科的治療や抗ガン剤、放射線療法が大きな柱となっています。そして研究が進むにつれて、抗ガン剤や放射線療法はいずれもガン細胞にアポトーシスを起こすことにより、効果を発揮していることが明らかになってきました。
 放射線療法はこれの照射によって発生する活性酸素が、ガン細胞にアポトーシスを起こす引き金になっているといいます。ところが、抗ガン剤は正常な細胞に対しても、ガン細胞と同じようにアポトーシスを起こしてしまいます。これが副作用の大きな原因になっていると考えられるようになってきました。放射線の場合も、活性酸素が過剰になると正常細胞のアポトーシスが起こり、同様に副作用が起きると考えられます。温熱療法(43回参照)でも患部を43~44度に加熱すると、ガン細胞はアポトーシスを起こして死んでいきます。この場合は、放射線と違って低酸素のほうが効果が強い(大きなガンは血液が中心部まで流れにくく酸素圧が低く、放射線の効果が減弱する)ので温熱療法と併用すると、両者の欠点が補われて治療効果が高まるのです。
 また、最近の研究によって、昔からガンに効くといわれるものの中には、ガン細胞をアポトーシスに導くものがあることが分かってきました。では、アポトーシスはどのようにして起こるのでしょうか。
 アポトーシスには形態学的変化と生化学的変化があります。顕微鏡をのぞいてアポトーシスを形の上からみると、細胞がだんだん小さく縮んでいき、核が規則正しく小さな断片になります。このとき働く酵素がDNAヌクレアーゼで、最近この酵素の構造がはっきりと分かり、その活性発現にはカルシウムイオンとマグネシウムイオンの両方が必要であることが明らかになってきました。やがてアポトーシスを起こした細胞自体がいくつにも分かれ、マクロファージ(貪食細胞)などに食べられて処理されます。
 また、ガン治療のアポトーシスに関する壊死(ネクローシス)では、細胞膜の機能が働かなくなり、細胞外から水が流入し、細胞自身はどんどん膨らんで破裂するようにして壊れます。さらに細胞内でさまざまな分解酵素を含むリソゾームも壊れ、細胞自身が内から溶解していくことがあります。
 アポトーシスに必要なこのカルシウムイオンとマグネシウムイオンのミネラルは、現代人に不足しがちなミネラルであり、努めて摂っていただきたいものです。このように言いますと、摂取しやすいカルシウムだけを多く取り過ぎる傾向があるようです。ミネラルバランスが大切であることを忘れてなりません。とくにカルシウムのみの過剰摂取は動脈硬化や閉塞性疾患などを助長する結果になりかねませんので、気を付けてください。
 私たちの日本食は野菜や海草が中心のものが多く、カルシウムやマグネシウムに富んだ食品であり、伝統食を摂るように努めたいものです。続く。

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