ストレスについて3「ガンにとってストレスは最大の敵」

 一般的にはストレスが加わると、副腎皮質・副腎髄質ホルモンが分泌されて、ストレスに対抗しようとします。同時に自律神経系や免疫系も作動し、ホルモン系を含めて、3つの系の働きによって体の恒常性を維持しようと努めます。
 最近、免疫系とストレスの関係が注目されてきています。私たちの体の中ではガン細胞が常に生まれていますが、ほとんどがガンの発症にはいたりません。それは体内の免疫系が目を光らせていて、生じたガン細胞を攻撃、排除してくれているからです。とくにガン細胞に目を光らせているのは、ナチュラルキラーT細胞(NK-T細胞)という免疫細胞です。
 しかし、このNK-T細胞はストレスを受けると働きが低下するといわれています。そうなるとガン細胞を排除できなくなり、ガンになる危険が高くなります。NK-T細胞の活性は精神状態の影響を大きく受けますので、ガンを防ぐ一つの方法として、常にNK-T細胞が活性化されるよう、快適な精神状態を保つように心がけたいものです。
 次に、ホルモン系ではストレスに対して動員されるのは副腎皮質ホルモンです。しかし、一般にホルモンは体の外から入れるものではなく、体自身に作らせるべきものです。そのためにはホルモンの合成に必要な栄養素を適度に補給してやればよいのです。副腎皮質ホルモンはステロイドホルモンであり、コレステロールから作られるものです。このコレステロールは大部分は体内(おもに肝臓)で作られ、食べ物から取り入れられるのは全体の3分の1ほどにすぎません。
 よく油物や肉類を食べないのにコレステロール値が高いという人がいますが、これはストレスを強く受ける人であると思われます。体はストレスに対抗する副腎皮質ホルモンを作るために、その原料となるコレステロールを増産します。しかし、副腎皮質ホルモンを合成するには、その過程でビタミンCやEが多量に必要で、これらが不足したら副腎皮質ホルモンは合成されずコレステロールが余ってくることになります。
 今日ではステロイドホルモンを気軽に用いている場合がありますが、これは体の免疫系にも大きな影響を与えます。まず免疫細胞が影響を受け、その移動のスピードが遅くなったり、血中のリンパ球を減らし、免疫グロブリンの生産や好中球の殺菌作用を抑えるといった現象を起こします。こうなるとガン細胞を見逃したり、侵入してきた異物を取り逃がしたりする危険が高くなります。こういうことのないよう、ビタミンCやEを適度に取って、体自身に副腎皮質ホルモンを作らせるようにすることが大切です。
 ホルモン系に関していうと、強いストレスにさらされると、脳内において下垂体前葉では副腎皮質ホルモンを大量に作らなければなりません。しかし、その生産能力には限界があるので、同じ下垂体前葉から分泌される性腺刺激ホルモンや成長ホルモンの生産を犠牲にすることになります。その結果、長期にわたりストレス状態にあると発育障害、無月経症、睾丸や卵巣の萎縮、乳汁の分泌停止、性欲減退が起こりやすくなるのです。
 ところで、体にストレスが加わると副腎皮質ホルモンが分泌されますが、これは血糖値を高めます。ストレスに対抗するにはエネルギーが要るからで、糖分を燃やしてエネルギーを得るためです。しかし、肝臓や筋肉に貯えられているグリコーゲンの量はわずかで、やがてブドウ糖のもとはなくなります。ではどうすればよいか?
 ストレスが長く続くと、体は自分のタンパク質を溶かして糖分を作るようになります。これを「糖新生」といいます。ところがこれには都合の悪いことがあります。炭水化物(糖質)は炭素、酸素、水素からできており、これを燃やすと炭酸ガスと水になり、肺や腎臓から簡単に排泄されます。しかし、タンパク質には窒素も含まれている(イオウの場合もある)ので、タンパク質が分解されると体内に窒素が余ってきます。
 この窒素はやっかいもので、尿酸とか尿素窒素として排泄しなければならないのですが、これを排泄する腎臓に大きな負担がかかります。それで血液中の尿素窒素が高くなると腎機能が低下します。以上述べたようなことから、いくらストレスに強いという人でも、強いストレスが続いたら数カ月ももたないといわれている所以であります。適度に体を休める必要があるのです。

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