睡眠の新解釈のまとめ「短く小刻みに取る睡眠が効果的」

 前回までの睡眠に関する新しい考え方をまとめてみます。
 今までの一般的な常識である「睡眠は脳神経を休めるために、十分、長く必要で、浅い眠りは肺や心臓、腸などの内臓の働きをつかさどる延髄を休め、深い眠りは大脳を休める」に対して、新しい睡眠の解釈は「十分に長い睡眠が必要なのは、大脳を休めるためでなく、全身の筋肉の疲労を回復させるのに必要なもので、浅い眠りはとくに睡眠中の自律神経の働きを調節し、身体の別の部分の筋肉疲労を順次回復させるのに非常に役立ち、また、繰り返される深い眠りは脳の疲労回復と同時に、心臓の筋肉を休息させてエネルギーを蓄積するのに絶対に必要な眠り」ということを述べました。
 新しい睡眠に対する考え方が以前の常識的な考え方よりも正しいとすれば、今までの健康法としての睡眠の取り方も、必ずしも正しい方法とはいえないことになります。もっと上手な病気養生法としての睡眠のとり方があるのではという疑問がわいてきます。
 そこで、上手な睡眠のとり方や養生法を検討してみると、次のようになるのではないでしょうか。
 「睡眠は脳神経の休息が目的ではない」。まず最初に、我々は従来の常識の「脳神経」疲労回復のために、必ず長い時間(7~8時間)の睡眠が必要との考え方から、改めなければなりません。この事実はまた、別の理論からも正しいことが裏付けられます。
 それは、大脳、小脳、中脳、延髄、脊髄などを構成する神経細胞は、その他の部分の人体の細胞(筋肉など)と異なり、疲労回復処理に7~8時間も必要とするほど、大量の疲労物質を細胞内に蓄積することは不可能であるということです。また、たとえ脳神経細胞の補助をするグリア細胞に疲労物質が蓄積され、その疲労物質の処理に時間がかかるとしても、7~8時間という単位でなく、20~30分の範囲内の回復処理時間と考えられます。
 つまり、脳の酷使による疲労を回復させる目的のためには、夜間にのみ10分長い時間の睡眠をとるよりも、昼間に脳を酷使する合間に極短い時間の休息を与えることの方が重要であるといえます。とくに、昼間に短時間の睡眠を細切れに繰り返しとることが有効であると思われます。
 また、完全な睡眠でなくとも、脳の違った部分を使用する別のタイプの仕事や趣味に脳の働きを切り換えたり、あるいは筋肉をおもに使用する軽いスポーツ(心臓に軽い負担をかける)をするなどの生活パターンに切り換えることが、より有効に脳神経を利用することができると思われます。
 もし、万が一にも脳(脳神経細胞やグリア細胞)に異常な量の疲労物質が蓄積すれば、病的異常が生じ幻覚、幻聴、妄想などが発生することが考えられます。覚醒剤などの麻薬を常用している人が、睡眠をほとんどとれずに幻覚、幻聴、妄想などにとりつかれるのは、もちろん麻薬による作用でありますが、睡眠不足も多大に影響しているといえます。
 これらの知識を十分に考慮して、できれば大人になってからも子供の時のように、疲れたら寝るという睡眠をとることの方が、より正常に精神生活を充実させることができるといえます。例えば、受験勉強の時などにも、むしろこの新しい睡眠法を取り入れて、細切れに睡眠をとり、有効に脳神経を刺激することができれば、成績がアップするといっても過言ではありません。次回はとくに重要な臓器、心臓の休息について述べる予定です。

mn10