現代医学の推奨する良い睡眠「早寝早起きは三文の徳?」

 誰しも日常生活において、夜間十分な睡眠をとることが、健康生活を維持するのに大切であることは良く知っています。
 一般的に睡眠中は一度眠ってしまうと、一晩中ずっと同じ深さで眠り続けると考えられがちですが、これは誤りです。眠りには深い眠りと、ちょっと声をかけるとすぐに目を覚ますような浅い眠りのあることが分かってきました。(自分に関係のないわずかな物音では目を覚ますことはないようです)
 つまり、眠り始めてから1時間ぐらいするとぐっと深い眠りになり、その後30分ほどたつと浅い眠りに移行します。さらに20~30分するとまた再び深い眠りになります。それを何度か繰り返し、そのうちにだんだん浅い眠りになって、朝、目が覚めます。このように、人間の眠りには2~3時間の周期で浅い眠りと深い眠りを繰り返すというリズムがあるのが普通です。
 とくに浅い眠りの時に良く体を観察しますと、手足がピクピクと動いたり、寝返りをうったり、閉じたまぶたの下で眼球がグルグルと動いたりしています。この様な時には夢を見ていることが多いといわれています。
 すなわち、この浅い眠りのことを、睡眠下に眼球が動くということで「REM睡眠」と呼び、深い眠りのことを眼球が動かないため「NONREM睡眠」と呼んだりしています。
 ところで近年、夜間の生活が昼間と同様に華やかになり、昔のように「早寝早起き」することが、非常に難しくなってきました。そして、多くの人が知らず知らずのうちに「遅寝遅起」するようになったり、忙しい人は「遅寝早起き」するようになったりしています。
 これらの多くの人は、終始上手に睡眠をとる工夫もしないまま、慢性的な寝不足に陥っているにもかかわらず、近代社会における生活環境からのストレスによる病気などと、社会生活の複雑さに責任転嫁している場合も多いようです。このような社会現象に対して、多くの医療者が警告を発し「健康生活には十分な睡眠が必要」と、いたるところで訴えるようになってきました。
 また、現代医学の推奨する「脳の眠りと体の眠り」の考え方はといいますと、これらの眠りのリズムは非常に大切で、眼球の動きはたんに動眼筋の疲れをとるだけでなく、さまざまな生理機能の現れで、睡眠時に全身を調節していることが知られるようになってきました。
 そして浅い眠りは「体の眠り」といわれ、肺や心臓、腸などの内蔵の働きを司る延髄を休める目的であり、それと反対に深い眠りは「脳の眠り」といわれ、大脳を休める目的だと解釈されています。この深い眠りは成長や発達のため重要で、覚えたことを忘れさせない力をもっているとも説明され、とくに眠り始めてすぐの深い眠りの時には、成長ホルモンの分泌が最も抑制されることも知られるようになりました。以上のことからも、健康維持において睡眠は重要な役割を果たしていることが推察されます。
 では、昔から「早寝早起きは三文の徳」といわれているように、現代医学が提唱している「人間は、夜規則正しく睡眠をとり、早寝早起きすることが大切で、早寝早起きすると朝食がしっかりとれ、健康な一日をおくることができる。とくに、子供の場合は午後9時頃就寝し、午前7時頃起床する10時間睡眠が最も理想である」とする解釈は、はたして正しいと思われますか。
 私はこの意見とすこし違った考え方をしています。もし、現代医学の推奨する睡眠に対する考え方が正しいとしたならば、二交代、三交代で仕事をされておられる方々は、良い睡眠がとれないということになります。それは本当でしょうか。次回は私が正しいと考えている睡眠の解釈について述べる予定でいます。

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