いつまでも美しい肌でありたいという願いは古今東西、女性の大いなる願望であり、永遠のテーマではないでしょうか。そのために化粧品などを使ってさまざまな努力をされますが、私たちの肌がどのようになっているのか、一応の理解をされている方の効果がより上がることは言うまでもありません。そこで美しくなるための基礎として、まず私たちの肌の構造を説明しましょう。
皮膚は表面から順番に表皮、真皮、皮下組織の3つの層に分かれています。皮膚は外界との境をなし、内臓などを外部の刺激や衝撃から保護します。皮膚の作用として、保護作用、分泌排除作用、表現作用、呼吸作用、体温調整作用、知覚作用に分けられます。表面積は成人で平均1.6m2(畳1畳分)、重さ(表皮+真皮)は約3kg、皮下組織も加えると約9kgで、体重の14%といわれます。厚さは、手掌足底が最も厚く、包皮・眼瞼が最も薄いのです。平均では表皮は0.06~0.2mm(手掌足底0.6mm)、皮膚(表皮+真皮)は1.5~4.0mmです。
表皮は数層に分かれており、一番外側が角質層(ケラチン層)です。真皮には血管、リンパ管や神経がきていますが表皮にはありません。この血管によって栄養や酸素が送りこまれ、新しい細胞が生まれます。
表皮の角質層の表面は、皮脂腺から分泌された皮脂膜という油の膜でおおわれ、外界からの刺激を防いでいます。この皮脂膜は皮脂(脂肪酸)と汗腺から出る汗との混合物(エマルジョン)を言います。このエマルジョンが皮膚に潤いを与えています。その貯留場所が皮膚の溝で若い人ほどその溝が多くプリンとした肌をしているのです。
よく、皮膚は弱酸性と言われますが、細胞一個一個の核は核酸(DNA:Deoxyribonucleic acid、デオキシ ヌクレオチド アシド)といい、酸(アシド)と付いているが如く、間違いなく酸性です。しかし、細胞の核以外の部位は塩基性(アルカリ性)に傾いています。静脈血のpHは7.3~7.4(動脈血はpH7.35~7.45)の間に厳しくコントロールされており、もしpHが0.1狂うと生命の危機に陥るほど、血液のpHは大切なものです。
もし、身体の大部分を占める細胞質が酸性に傾いていたら血液のpHも酸性に傾くことになり、それでは生命は維持できません。つまり酸性というのは脂肪酸と汗の混じったエマルジョンのことで、皮膚組織ではありません。コマーシャルでは詳しく言えないので「皮膚は弱酸性」と大まかに表現しているようです。
表皮は、手掌や足の裏の表皮が5層(淡明層がある)、そこを除く表皮は普通4層(淡明層がない)から成っています。その一番下の層を基底層といい、ここにできた細胞は血液や体液から栄養分と酸素をもらって二つに細胞分裂し、新しい表皮細胞を生みます。
乳頭層は凹凸の形状で、真皮と表皮の結合部分の表面積を増し強固に結合しています。その下が栄養を運ぶ結合組織⑧で、血管、リンパ管や神経がきています。基底層にはメラノサイトという色素細胞が定着します。これが紫外線や静電気に反応すると基底層より下にある自己再生しにくい大切な真皮をガードするために黒いカーテンの様なメラニン色素の幕を作って真皮をガードします。これが部分的に残ったものがいわゆるシミです。
基底層で作られた細胞の一つが上に押し上げられ、形が変形し棘(キョク)のある有棘細胞になり、またそれが二つに細胞分裂して上に押し上げられ、その押し上げられた細胞が細胞内にケラチンを点在させた顆粒層になります。
角質以下の表皮である顆粒層、有棘層は約65%の水分を含んだ生きた細胞で、外からの刺激に反応してその情報を神経に伝えたり、免疫反応を起こしたりし、身体を守ります。顆粒層でできた細胞は分裂することなく上に押し上げられ、一番上の皮膚表面の細胞、つまり角質層になります。
その厚さは約0.02mm(手掌足底はもっと厚い)で、水分30%で約14層が重なり合い、主にケラチンというタンパク質でできており、セラミドが角質細胞の間を埋めています。角質層は核を失い死亡した細胞で、皮膚に触れるものから身体を守ってくれるバリア機能が仕事です。
例えば、洗剤を素手で触っても肌の内部にしみこんでくることはありません。また、内部の水分が蒸発しないように保持し、細胞膜に高濃度存在する保湿成分であるセラミドが下からの細胞分裂と表皮からの気圧による加圧で扁平になるにつれ物理的に押し出されて、バリア機能が向上します。
この機能が低下すると水分保持力も下がり、乾燥肌、さらに外部刺激に敏感になり、アトピー性皮膚炎、化粧水がしみたり、洗剤でかゆくなったり、吹き出物ができる等の肌トラブルを引き起こしやすくなります。
このように新しく基底層に誕生した細胞が、順々に押し上げられ、最後は垢となって落ちていくサイクルを「新陳代謝」といいます。しかし、角質層総てが垢ではありません。ここで大切なことは、新陳代謝の産物である垢は押し上げられて落ちていく部分を指しますが、何処から落ちるのでしょうか? 垢は何処までで、何処までが角質層かの区分が解っているようで解っていないのです。
実は皮膚表面で、マイルドながら化学反応が起こっているのです。その化学反応としては主に中和反応です。中和反応とは、例えば強アルカリで大変危険なNaOH(水酸化ナトリウム)と、強酸のHCl(塩酸)を丁度の分量で反応させると、NaOH(水酸化ナトリウム)+HCl(塩酸)→NaCl(塩)+H2O(水)の反応が起こり塩水になり無害化されます。このような反応を中和反応といい代表的な例です。
この反応は当然、弱アルカリと弱酸性でも起こります。つまり、皮膚の最上層部の角質層の主成分であるケラチンの塩基性アミノ酸は弱アルカリ性を示し、脂肪酸と汗の混じったエマルジョンは弱酸性で、この両者の間で常に中和反応が起こっています。
中和反応は、産生物+水ができる反応です。つまり、皮膚では脂肪酸ケラチン+水になり、そこでできた水の浮力で垢が浮かされ剥がれ落ちていきます。つまり、垢の正体は自分が排泄する物質の化学反応により生じた脂肪酸ケラチンと水なのです。お風呂に入ると垢が浮くことはご承知の通りで、垢つまり脂肪酸ケラチンは水より比重が軽いことになります。
ここで、大切なことは、最高の美容液は自己が出すエマルジョンだということです。自分で作ったエマルジョンの取りすぎに注意を払い、より一層、自己のエマルジョンを作るようにすることが最も重要な美肌の基本です。つまり、人工のエマルジョンを補うのではなく自己で作り出すように働きかけることが、いつまでも美しい肌でありたいという願いを叶える秘訣だと言えます。
次回はシミやソバカスを主体に述べさせて頂きます。