アトピーについて「腹八分目に医者いらず」

 「腹八分目に医者いらず」という言葉は、江戸時代の貝原益軒がいった言葉ですが、古代エジプトのピラミッドには次のような碑文が残っているそうです。「われわれはふだん食べている食物の4分の1で生かされている。あとの4分の3で◆◆が生きている」。この◆◆のところは何だと思いますか。実は医者なのです。つまり、生きていくには4分の1でよいのに、4分の3は食べ過ぎて病気をし、それで医者がもうかっているという意味です。
 これは大変重要な言葉だと思います。古代エジプトというのは奴隷制の時代で、栄養失調で餓死する人は大変な数に上ったことでしょう。食べ物を吐くほど食べれた人はほんの一部の支配階級だったはずです。この文を書いた人は支配階級の人のことを書いたと想像されます。現代の日本ではこの構図はまったく逆です。飢えて死ぬような人はほとんどありません。大部分の人が満腹し、吐くほど食べて、食べ過ぎて病気をし、医者が繁盛しているのです。何とも矛盾した馬鹿げた現象です。
 東洋医学では健康を維持するため、また病気を治すために「気・血・動」のバランスを取ることは大切なことだという考え方があります。これは千島喜久男博士が提唱され、「気」は心の安定、「血」は正しい食事、「動」は適度の運動を示しています。つまり、苦しんでいるのは自分だけではない、とか精神的な話をして心の安定を図り、食事療法を基本にして散歩や適度な運動をして、病気の治療や健康管理に役立てるという考え方です。
 私達の健康を考える場合、食事療法を主として、諸種の物理化学療法をその補いとすることが大切ですが、「おぼれる者ワラをもすがる」とのごとく、すぐ色々な治療法に飛びつきます。そして、どうかとすると現代医学だけに頼りがちですが、医食同源という言葉がありますように、主客転倒した療法では健康になれません。とくにアトピー性皮膚炎やリュウマチなどの慢性的な疾病ほど、食事を含めた生活環境を考え直す必要があります。
 一般に「バランスのとれた食事をしなさい」といわれますが、では実際に何を、どのような割合で食べればよいかとなると分からないのが現状です。厚生省によりますと、6つの基礎食品をもれなく組み合わせて食べることが、1日に30食品を目標に全菜と福菜をそえて食べれる目安になるとしています。しかし、これは大変なことです。
 そこで、私が考える一応の目安を示しますと、1回の食事量を10としますと、主食を5、副食5と半々にとるのがよいと思います。そして副食は魚介類1、豆腐・納豆類の加工植物性タンパク1、野菜・海草類3の割合で取るとバランスが取れるのではと考えています。これは昔からの日本食です。日本は世界一の長寿国になりましたが、いま高齢者の方々の若い頃の食事というのは、ご飯2杯にメザシ1~2匹、きんぴらごぼう、おひたし、それに豆腐とワカメのみそ汁ぐらいのものでした。これはまさに1:1:3のバランスにあっています。これにご飯が玄米なら理想的といえるでしょう。
 ところが現代は食事が豪華になって、種類も増え、野菜も食べるが肉も食う、牛乳も飲む、果物も食うで、結局病気になっているのです。また別の観点から、食事の要点を3つまとめますと、(1)なるべく自然食を。 (2)腹八分目に。 (3)バランスよくとる。 です。これが実行できれば健康で長寿になると思いますが、いまは何を食べても食品添加物が入っています。その量は1日に10~12gといわれています。また農薬が使用されており、自然食などなかなか手に入りません。
 環境汚染は地球的規模で進んでおり、北極や南極からも汚染物質が発見されています。そう考えると、本当に自然な食べ物などありませんが、少しでも自然に近い、農薬の少ない、添加物の少ない食べ物を選ぶ努力をすることが大切です。そういう努力が日本の農業を少しずつよくしていくと思います。ところが、消費者が添加物や農薬が使用されていても味のよいもの、見た目にきれいなものなどを選ぶ限り、生産者もその需要に応じるのは当然です。なるべく自然なものを選ぶ努力は必要です。
 二番目の「バランスよく」は、主食と副食を半々の割合で取ればよいと思うのですが、厚生省のバランスばかりを考えていると、食べ過ぎる可能性が高いので注意が必要です。そこで昔から「腹八分目に医者いらず」という言葉があるように、食べる量が全体で腹八分目に納まるようにすることです。当然、腹七分目、六分目でもよいのです。西式健康法の西勝造先生は「常におなかがすいている状態でいるのが健康の秘訣」といわれたそうです。今日は食べ物が豊富で、おなかすいたらすぐ食べます。お金を出せば何でも手軽に買えます。しかし、おなかがすいたら「いま五臓六腑が休めて喜んでいる」「いま少しで元気で健康になれる」と思うと、案外、空腹が我慢できるかと思います。
 皆さんも毎月1回は1食抜いてみてはいかがですか。それだけでも健康に役立ちます。ピラミッドに記されていた4分の1とはいいませんが、せめて腹八分目に減らせたら、もっともっと健康になれると思います。

mn91