アトピーについて「アトピーはアレルギー10数%」

 アトピーについて「甘党は老化しやすい」で、砂糖は体に悪いというようにも受け取れるところがありましたが、砂糖が悪いのでなくて、砂糖に限らずどのような食べ物でも取り過ぎは控えた方が良いということなのです。誤解がないようにお願いします。
 例えば、私の患者さんで、ニンニクが体に良いというので毎日1玉を電子レンジで温めて夫婦で半分ずつ食べていたといいます。ある時から奥様にだけ体のあちこちにジンマシンのような湿疹が出て、皮膚科を受診していましたが、軽減しないとの相談がありました。私は「いくら体に良くても取り過ぎは悪い。一度、ニンニクを食べるのをやめたらどうか」とアドバイスしました。同じ量のニンニクを食べているご主人は何も出ていないので、それが原因とは考えていなかったようでしたが、ニンニクをやめて1週間したら湿疹がなくなっており、感謝されたことがあります。この例のように、女性と男性では栄養の吸収の能力が違うようです。とくに女性は生理で血液を排泄するため、閉経期を迎えた方は以前と比較し排泄能力に大きな差が生じていますので、食事の摂取量に注意した方が賢明だと考えます。良いといわれる物でも、過ぎたるは害になるということです。
 アトピー性皮膚炎でも、これが良いといわれて、そればかり取るのはかえって危険なことになりかねません。アトピー性皮膚炎はアレルギーが関与すると考えられますが、アレルギーが発見されたのは昭和の初期の米国です。若き医学生リンケルは、実家で農場をやっていたので父親から送られてくるパンと卵ばかり食べていました。ところが、そのうち鼻のアレルギー症状が出てきたのです。これは卵が原因だろうと思い、逆に彼は卵の量を増やしてみました。すると症状が悪くなるのではなく、いくらか良くなってきました。
 今日も同じですが、当時も米国では食物アレルギーというのは、増やして症状が変化する食物より、やめたら良くなる食べ物が原因と考えられはじめていたので、次にリンケルも卵をやめてみました。すると、症状はグーンと良くなったのです。ところが、卵を食べるのをやめた五日目に、たまたまケーキに混じった卵を食べてしまったところ、ひどいショックを起こして倒れてしまったのです。そこで彼は卵がアレルギーの原因で、これが本当のアレルギー症状だと結論しました。そして、前に卵を毎日食べていたとき、鼻がグズグズしていたのは「マスクされた(覆われた)アレルギー症状だ」と考え学会で発表しました。しかし、まったく相手にされず一笑にふされたといいます。そこで彼は10年間データを集めその結果を学会で発表し、ようやく認められました。
 この考えは今日の考えの元になっています。現在、毎日食べている食物のなかで、アレルゲン(アレルギーの原因となるもの)は140種くらいあるといわれていますが、人によってアレルゲンとなるものは違います。アレルギーを起こす食物が分かったら、それを約5日ごとに食べていくのがよいというのが、米国のミラー博士が提唱する「サイクリック・ダイエット」で、いわば回転食です。5日以上間隔があくとショックを起こすので、これを防ぎマスクされたアレルギーの状態に保つために5日目ごとに食べていくという考え方です。ただし、これは治療食ではなく、ショックを防ぐための食事法であることはいうまでもありません。
 次に、アトピー性皮膚炎の原因について皮膚科の専門医は食物アレルギーが関与するのは、約10数%だろうと言われる方が少なからずおられます。では、アトピー性皮膚炎の残りの80数%は何かといいますと、その患者を取り巻く環境が考えられてきています。よって、環境を正さないとアトピー性皮膚炎の治療は難しいと考えられています。一方、喘息やアレルギー性皮膚炎では、アトピー性皮膚炎とは逆に、80数%がアレルギーだといわれています。
 アレルギーというのはおもに、生体が異種タンパクに対して起こす現象といわれ、母親の母乳で育てられている子供はほぼ同種タンパクなので、アレルギーは起こしにくいといわれます。ところが人工栄養の子供は、牛のタンパク質(異種タンパク質)なので、アレルギーを起こしやすいと考えられます。そのなかでも、とくに分子量が7,000~50,000のタンパク質がアレルギーを起こすといわれています。7,000以下でも50,000以上でも、アレルギーは起こしにくいのです。よってアレルゲンはある程度限られます。食物ではソバ、卵白、牛乳などといわれています。今日、アレルギー検査に使われるのはほとんどが牛乳です。そのほかでは大豆、小麦、米もアレルゲンになりえます。
 とはいえ、アトピー性皮膚炎にアレルギーが関与するのは10%程度とするならば、治療にはまず環境をよくする必要があります。昭和40年頃から増加がみられるのも、環境の変化、生活が豊かになってきたことが関与しています。30年代に発表されたデータでは、アフリカから英国に移住してきた人々に関し、アフリカでのアレルギーの発症率は約9%だったのが、ロンドンへ移住したところ約40%強と4倍以上に跳ね上がりました。一方、英国へ移住しても郊外に住んだ人の発症率は以前と変わらなかったといいます。これはアレルギーの発生に環境が大きく関わっていることを示しているのです。
 これまで、母乳で育てていればアレルギーは起こらないといわれていました。確かに人工栄養で育った子供と比較すると、アレルギーは少ないし程度も軽いのです。しかし、母乳栄養が増えてもアレルギーは減っていないという指摘が、英国でなされています。次回はアレルギー以外の原因について述べる予定です。

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