アトピーについて「老化=結合組織」

 皮膚や粘膜のうるおいを保ったり、体の内から脂の分泌を促進するにはビタミンAが重要で、特に鼻や口腔、気管、肺、ぼうこう、胃や腸など表面の粘膜を正常化するには必要不可欠です。平素、ビタミンAは肝臓に多く貯えられており、必要に応じて運び出されていきます。ただし、ビタミンAを運ぶには肝臓で産生される専用のタンパク質が要るため、ビタミンAを正常に機能させるにはまず肝臓が健康な状態でなければなりません。
 また、ビタミンAを運搬するタンパク質の合成には酵素が必要ですが、その酵素の協同因子として亜鉛が必要です。ところが今日の食生活では亜鉛が少なく、米国では亜鉛の1日の必要量は15mg(日本は未決定)とされていますが、日本人はその60%以下しか取っていないと予測されています。実際に、亜鉛が欠乏するといろいろな皮膚の障害が起こります。
 昔から亜鉛華リニメントや亜鉛華軟膏が皮膚の湿疹に用いられており、このことからも亜鉛の重要性が分かっており、現代でも亜鉛は皮膚の異常を治すため大切です。例えば、床ずれで悩んでおられる高齢者の寝たきりの方を良くお見受けしますが、これは大変厄介な病気で、細菌感染を起こして長びくことが多いのです。そこで床ずれができた場合、まずビタミンCを投与し、これに亜鉛をプラスすると、治りが大変早くなります。ビタミンCだけでも効果がありますが、亜鉛があるとないのとでは大変な違いがあるのです。これはアメリカの兵士を対象に、傷の治り具合を調べた結果判明したことですが、亜鉛を加えた(硫酸亜鉛のカプセルを内服させた)兵士は、そうでない兵士と比較すると約半分の日数で治ったといいます。
 食べ物で亜鉛が多く含まれているのは、まずカキ(貝)で、次いでカボチャやヒマワリ、松の実などの種実類です。種実類の取り方が少ない場合、亜鉛不足に陥り易く傷の治りが遅くなります。さらに菜食主義の方は玄穀や野菜類をよく食べられますが、これらにはセンイ質やフィチン酸が多くあり、ミネラル類を吸着して排出してしまいます。また、亜鉛が不足すると胸腺が萎縮してしまいます。つまり免疫力が低下することによって体外から侵入してきた異物を撃退できなくなり、床ずれの細菌感染も起こしやすくなるのです。
 皮膚との関係でいいますと、皮膚の強さを保持しているのがコラーゲンであり、弾力性はエラスチンが関係していますが、このコラーゲンの合成にはビタミンCがなければなりません。真皮の網状層には線維が主に皮膚表面と平行して走っていますが、この線維の主成分がコラーゲンです。コラーゲンの間には主成分がエラスチンである弾性線維が存在していますが、年齢を重ねるごとにこの構造に変化が起こります。若い時は密に並んでいるコラーゲンは加齢とともに細くばらけ、また網の目状にきちんと並んでいたエラスチンも、枝分かれするなどして構造が崩れていきます。そして皮膚の弾力性や柔軟性が失われるのです。一番顕著にあらわれるのがシワです。
 皮膚は日光に当たると老化が早く進み、これを光老化といいます。日光にはUVA・UVB・UVCの3つの紫外線が含まれています。紫外線は波長が短いほどエネルギーが大きく作用も強いのですが、一番波長の短いUVCはオゾン層にほとんど吸収されてしまい、地上には届きません。もし届いたとすると人類は生きてはいけません。私たちが日常浴びるのはUVAとUVBですが、このうちUVBの方がエネルギーが強く、体にも深く入り込みます。窓ごしの場合、UVBはガラスに反射されて室内にはほとんど入ってきませんが、UVAはガラスを通して室内に入ってきます。これらの紫外線に当たりますと、コラーゲンやエラスチンに老化が起こります。
 前述のようにエラスチンは弾性線維の主成分ですが、線維芽細胞の活動が紫外線によって影響を受けて、異常な弾性線維になると考えられます。つまりシワの山側の部分では増殖が著しく谷側の部分では少ないのです。そのため光老化によるシワ(漁師の首すじなどにできたシワ)は指で引っ張っても消えません。普通のシワは指で引っ張ると消えます。これがシワの簡単な識別方法です。
 一方、皮膚の強さの源であるコラーゲンは、紫外線に当たり過ぎると架橋ができます。もともとコラーゲンは3本の線維がより合わさって、皮膚の強さを保持していますが、これに架橋ができ過ぎると固くなってしまいます。これを過剰反応といいますが、この過剰反応は人体の中ではよく起きることです。例えば傷をしますと、その細胞が壊れますが、壊れた部位を治そうとコラーゲンができてその跡を埋めます。しかしそれが過剰になり、傷跡は盛り上がってしまいます。
 また、酒を飲み過ぎて肝臓が壊れたような場合、その跡を結合組織ができて埋めます。これが繰り返し行われますと、肝臓がやがて固くなってしまい、この状態を肝硬変といいます。細胞には直接血管が通っているわけではなく、細胞に栄養分を送ったり、細胞で生じた老廃物を回収したりするのは、血管と細胞の間に介在する結合組織を通して行われています。
 しかし、結合組織が過剰にできて固くなってしまうと、栄養素が運ばれにくくなり、老廃物も回収されにくくなることに加え、神経伝達物質も届かなくなります。つまり、細胞間を埋める結合組織が構造的変化を起こし、その機能を十分に発揮できなくなるのです。皮膚では紫外線によってコラーゲンに架橋が起こり、構造的変化が起こって皮膚が固くなっていきます。これが老化現象なのです。紫外線には十分注意し、ビタミンA、C、亜鉛を摂取するよう心掛けたいものです。

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