脳卒中について「痴呆の予防とサフランの効果」

 サフランについてご質問があまりにも多かったので、その効果について少し触れておきます。生薬相場をみますと、普通は500g単位の値段が掲載されてますが、サフランは25gで15,000円くらいする高価なものです。大分県竹田市は日本でサフランの生産量が一番多く、しかも品質が世界一良いとされています。サフランは10~11月に淡い紫色でメシベが3本ある花を咲かせますが、薬用に使用されるのはこの3本のメシベだけで、手間もかかります。このため、500g当たり約30万円もするのです。
 前回少し触れましたが、サフランの活性部分はクロシンという物質であることが判明しました。この成分は非常に不安定で、管理が悪いと分解されて効力がなくなってしまいます。中国産やスペイン産のサフランにクロシンが少ないのは、品質管理が良くないからだと考えられます。斎藤洋教授、正山征洋教授らはサフランの中のクロシンを安定に保てる方法を開発されたとのことです。それでは順を追ってサフランエキスの効能について大まかに述べていきます。

  1. アルコールによる記憶獲得障害に対する効果=ネズミに30%のアルコールを飲ませ、ステップスルーテストとステップダウンテストの2つの学習をさせますと、大変成功率が低く、間違いが多いのですが、サフランエキスを同時に与えた場合、エキスの量が多くなるほど成功率が高くなる傾向があります。(ステップスルーテストとは、明るい部屋と床に電気を流した暗い部屋を用意、ネズミはその習性から暗い部屋に移ろうとしますが、明るい部屋に入れても暗い部屋にどれぐらいで行かなくなるかを試すテスト。ステップダウンテストは電気の流れる床に絶縁体の台を置き、その上にネズミを乗せます。ネズミは不安定な所を嫌い床に降りようとしますが、電気ショックを受けて台の上にあがります。ネズミを台の上に置いても、どれぐらいで床に降りようとしなくなるかを試すテスト)
  2. アルコールによる記憶再現障害に対する効果=1日目にこの2つのテストを学習・記憶させたネズミに、2日目は40%のアルコールを飲ませてから再び2つのテストを行いますと、やはり成功率が低く、ステップダウンテストにおいては0%になります。
  3. 鎮静作用=前回述べましたように、サフランには気持ちを落ちつかせる働きがあり、ふつうネズミは新しい環境に移すと、落ちつかないのであちこち動き回りますが、サフランエキスを飲ませると動きが少なくなり、落ちついてきます。エキスの量が多いほど落ちつく傾向があり、サフランエキスに鎮静効果のあることの証明になります。
  4. 催眠延長効果=ネズミに軽い麻酔薬を注射すると、ネズミはしばらく眠って目を覚まします。このときサフランエキスを飲ませて麻酔薬を注射しますと、寝ている時間が延長します。不眠症の人がサフランでよく眠れるようになることを証明したものといえます。

 このようにサフランエキスにはさまざまな効能があることが分かりました。活性本体のクロシンは炭素数が20の不飽和炭化水素鎖に、ゲンチオビオースという糖が2つ結合したものが両末端についています。この不飽和炭化水素鎖はカロチノイド色素に共通した基本骨格で、β-カロチンもこの仲間にはいります。ネズミの脳室内にβ-カロチンを投与してエタノールによる長期増強に対する効果を調べてみましたが、β-カロチンには効果はなく、クロシン特有の効果であることが分かりました。
 前回、クロシンの長期増強について述べました。これはある刺激に対して、海馬のシナプスの伝達効果が著しく高まり長時間続く現象で、記憶学習に重要な役割を果たしていると考えられます。そこで、クロシンと他の、エタノールによる長期増強抑制に対する効果について、それぞれの薬物を室内に投与して調べた結果、クロシンが海馬の神経細胞の活動電位をいちばん高めました。これらの結果から、クロシンが活性本体であることが確認できたわけです。
 では痴呆症を予防するには、どのようにしたらよいのかといいますと、まず平素からメモや日記をつけるなどできるだけ大脳を使うことです。食生活では、

  1. サフラン(脳の海馬の神経細胞を活性化し、情報の伝達効率を高め、記憶学習障害を改善する)
  2. ビタミンB6=酵母、レバー、豆腐、卵(神経細胞の生存を維持し、脳神経ネットワークを保つ)
  3. 卵黄レシチン(脳細胞の膜成分となる甘料や神経伝達物質のもとになるホスファチジルコリンを多量に含み、脳神経の新陳代謝に重要な成分)
  4. イチョウ葉エキス(脳の血液循環を改善し、必要な酸素とエネルギーを脳のすみずみまで供給。フラボノイドの活性酸素除去作用も重要な働き。ヨーロツパでは医薬品とされている)
  5. 必須ミネラル(例えばセレン、イオウなどグルタチオンペルキオシダーゼなど、さまざまな活性酸素除去酵素を作る重要な成分で、ゴマ、タマネギ、ニンニクなどに多く含まれる)

 の5つの成分をバランスよく取ることは良いことだと思います。
 薬草は概ねアルコールに浸けてエキスを抽出します。例えばイチョウの葉は緑色の時に摘み取り日陰干しにして土瓶(遠赤外線効果が強い)で煮詰め、その後アルコールで不水溶性エキスを抽出します。次回は「水」についての質問が未だに多く寄せられますので、水についてまとめます。

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