ミネラルについて「まとめ その1」

 前にも述べましたが、微量元素の不足は全身症状として出ることは少なく、局所症状として出ることが多いので見逃されていました。ミネラルの働きが最初に問題になったのは高カロリー輸液、俗にいう点滴です。胃ガンや潰瘍などの食事ができないような疾病の手術を受けますと、しばらくは食べ物が取れないため、点滴で栄養分を補給します。まだ微量元素のことが分かっていなかった頃、はじめに出てきたのは味覚障害とか性欲減退などでした。その原因を調べて亜鉛が不足しているということが分かったのです。それをきっかけに微量元素の研究が始りました。つまり、亜鉛は味覚障害に関与するミネラルということです。
 このことから、今まで述べてきたような数々の微量元素の必要性が研究され、提唱されるようになってきました。ここで簡単にまとめておきますと、例えばカドミウムがイタイイタイ病の原因となったり、有機水銀が水俣病を引き起こすなど、これらの有害重金属が強い毒性をもっていることは周知の事実です。また、鉛も強力な神経毒です。これらは極微量ずつでも、取り続けていると体内に少しずつ蓄積され、ある時突然バランスが崩れて毒性を発揮します。これらの害を防ぎ、また緩和するにはいろいろなミネラルが必要といわれています。有害重金属と体内で競合しあうミネラル、つまり反対の作用をすることによって有害重金属の吸収を抑えたり、毒性を抑制したりするのもミネラルなのです。その代表的な例を列挙します。

  1. カルシウム=イタイイタイ病は骨のカルシウムが抜け出し、かわりにカドミウムが入り込み、骨がもろくなって骨折します。布団の重みで骨折することもあります。体が衰弱し「いたい、いたい」と言いながら死に至るところからこの病名がついたくらいです。カルシウムを十分に取っていたら、骨の脱灰を防ぎ、症状を軽減することができただろうといわれています。イタイイタイ病も一種のカルシウム不足が要因の1つの疾病といっても過言ではありません。
  2. セレン(セレニウム)=有機水銀は水俣病の原因物質で、非常に強い毒性を持っています。マグロはかなり高濃度の水銀を含んでいますが、中毒症状は出ていません。高濃度の水銀を含むマグロはセレンの含有量も高く、セレンの含有量の低いマグロは水銀量も低く、常にセレン含有量が水銀を上回っていることは述べました。つまり有機水銀とセレンは比例していればその害は防げます。セレンは水銀と結合して水銀の毒性を軽減していると考えられています。また動物実験でもセレンは鉛やカドミウムの害を軽くすることが認められています。
  3. 亜鉛=動物実験でカドミウムを注射しますと睾丸が萎縮します。しかし亜鉛といっしょに与えたり、前もって亜鉛を与えてからカドミウムを投与すると、睾丸の萎縮は起こりません。これは亜鉛の投与によって体内に生じる亜鉛結合タンパクが、カドミウムに取り付いてその毒性を抑えるためであると考えられいます。カドミウムは亜鉛とともに存在することが多く、カドミウムは亜鉛を精製する過程でできる副産物なのです。極めて逆説的なことですが、亜鉛と同時にあることでカドミウムの害が抑えられているのではないかといわれています。亜鉛はほかにも水銀や鉛などの毒性を抑える働きがあるといわれます。また亜鉛欠乏動物では重金属の害がより強く現れるといわれています。
  4. 鉄=鉄が十分にあればカドミウムや鉛などの吸収、沈着が抑えられますが、鉄が不足すると成長の阻害や貧血などを起こしやすく、酵素のなかでもとくにチトクロームP450の生産量の減少とともに、中毒症状も強く出るようになるといわれています。
  5. 銅=体内には銅を必要とする酵素系があり、これらがカドミウムや鉛の中毒症状を軽減するようで、銅が欠乏すると中毒症状が強く出るといわれます。

 以上のようにミネラルは大変重要な働きをしています。ミネラルについておおよそのガイドラインをまとめますと、生体に必要な元素は主要元素、準主要元素、微量元素に大別されます。

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