ミネラルについて「解毒は鉄で」

 鉄は酸化・還元の両方に関わる大切なミネラルです。鉄には二価と三価がありますが、通常目にするのは酸化されて茶褐色の三価の鉄です。この三価鉄は吸収されにくく、二価の鉄に還元してやらないと、吸収されにくいのです。つまり、食物の中の鉄というのは三価鉄の状態で存在することが多いため、大変吸収率が悪く、5%以下しか吸収されないといわれます。そこで例えばビタミンCがあると、吸収率が6倍くらいに上昇するといわれます。ビタミンCが還元剤として働き、三価を二価に変えるので吸収が良くなるのです。これにはアミノ酸もかかわる場合がありますが、主としてビタミンCが還元剤になることが多いようです。
 しかし、鉄にはいろいろなものと化合し硫化鉄や酸化鉄などになっている場合が多く、これを分解して鉄イオンにして初めて吸収されるのです。そのためには胃酸が必要になります。したがって、胃酸の出方の少ない人は鉄が吸収されにくくなります。つまり、鉄欠乏性貧血の人は胃の弱い人が多いわけです。鉄欠乏性貧血は貧血のなかで最も多く、長期に続くと無酸症や萎縮性胃炎になる可能性が高まります。これがまた、鉄の吸収をより悪くするという悪循環に陥ります。
 鉄の欠乏が長期間続きますと、貧血になる前に皮膚や粘膜に異常が出てきます。例えば、高齢者になると舌が赤くつるつるになり、塩からいものがしみることがありますが、これも鉄不足の兆候の1つです。また、胃の粘膜が同様になることもあります。興味深いことに、鉄が不足すると、やたらに氷やハッカの入ったものを食べたくなるなど、嗜好(しこう)が変わることが多いものです。そういう人に鉄を与えると、早期に改善されるといいます。胃の粘膜が萎縮するとガンの発生する確率が高くなりますから、注意が必要です。粘膜の分化を正しく行わせるにはビタミンAが大切で、胃や腸にポリープができるのはビタミンAの不足も大きく関わっているようです。
 先に述べましたわうに、鉄は吸収率が悪く、豆類、穀類、野菜などで約5%、魚や肉類が15~20%で、平均して10%くらいしか吸収されないといわれます。それでも鉄が欠乏しないのは、鉄が体のなかで効率良く再利用され、尿や汗などから排泄されるのは、1日わずか1mgほどだからといわれます。つまり、食べ物から1日に10mg取れば、その10%の1mgが吸収され、1mgが排泄され帳尻は合うということになります。ただし、胃潰瘍や痔などの異常出血の人やまた女性では生理でも失血するので、より多く鉄を取る必要があるのです。菜食の人も吸収率が悪いので、WHOでは肉食の人は1日14mg、菜食の人は28mgと、2倍取るように勧めています。
 このように鉄は貧血防止に重要ですが、酵素とも深い関係があり、最近注目されているチトクロームP450という酵素にも含まれています。我々は日常、知らず知らずのうちに種々の薬物、例えば医薬品、農薬、食品添加物などを取り込んでいます。それなのに大きな病気もせずに働け、80や90歳までも長生きできるのは、これらの薬物を解毒・無毒化する働きがあるはずです。この働きは腎臓や小腸、副腎などでも行われますが、主として肝臓で行われているといわれます。この働きに大きく関わっているのが、チトクロームP450という酵素です。
 酵素とは俗に言う触媒の働きをするものです。一般的に酵素には基質特異性があり、1つの酵素は決まった1つの物質に作用します。つまり、カギとカギ穴のように1対1の関係になっているのです。ところが、チトクロームP450は特異性がなく、どのような薬物が入ってきても、肝臓で合成され、これらを解毒していくといわれ、大変柔軟性のある酵素なのです。チトクロームP450は入ってきた薬物に、酸素を1個くっつけます。これは「極性が高くなる」といいますが、このあとグルグロン酸などの水と親和性の強い化合物と抱合体を作り、水溶性になって尿から排泄されていきます。
 体内に有害な薬物が入ってきた場合、水溶性のものは尿や汗に排泄されるからよいのですが、問題は油に溶ける薬物で、これらは排泄されずに体内に蓄積していきます。これを水溶性にしやすくするため、酸素を1個つけるのがチトクロームP450なのです。この酵素はいまさかんに研究されており、すでに100種以上のチトクローム酵素が発見されてますが、どんな薬物が入ってきてもその95%以上はこの酵素で解毒できるといわれます。
 チトクローム酵素は鉄を持ったヘム蛋白です。赤血球もその1つでヘモグロビンを持っています。ヘムはポルフィリン環に鉄が入ったもので、そのために赤色をしています。この鉄がマグネシウムに置き換わったのが葉緑素となり、銅になるとヘモシアニンで甲殻類の血液です。先に、体内に入った薬物の95%はチトクロームP450で解毒されることを述べましたが、薬物が薬として働くか、毒として作用するかは紙一重の差といえます。
 そもそも薬物は正常な体の機能には不必要なものです。薬物は多かれ少なかれ、生体に対して異常な作用を及ぼす可能性があるとの認識が必要です。つまり、薬物の一部が薬として効くのであって、薬として効かない薬物は体には毒として働くことになるのです。これを解毒するのにチトクロームP450が働きます。我々の血液はヘモグロビンが主要成分であり、チトクロームP450の材料である鉄が豊富にあるため、解毒効果が強いといえます。よって鉄欠乏性貧血の予防のためにレバーなどを心掛けて摂取したいものです。

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