ミネラルについて「血液の汚れは亜鉛で」

 私たちの体は血液によって養われています。血液の流れが止まればむろん、血が濁り流れが滞っても、さまざまな症状が現れます。健康のためには血液がきれいで、さらさらと流れなければなりません。血液はpH7.3~7.4に厳しくコントロールされており、そのため血液が濁る、つまりpH7.3に近づく(酸性化する)のを防止するために、幾重もの防御壁がめぐらされています。これをホメオスターシス(恒常性維持機構)といいます。
 そのおもなものは重炭酸塩、タンパク質、赤血球のヘモグロビンなどの働きによるところが大きいのです。肉類や甘味料などの多食により、血液が酸性に傾きかけると、これらが動員されて酸毒を中和し、正常な血液のpH7.4付近を保つよう働きます。とくに、重炭酸塩は重要な働きをしています。これが血液中に多く含まれていると、血液はいつもきれいな状態に保たれ、健康は増進されます。そのため、この重炭酸塩は「予備アルカリ」と呼ばれます。
 人体はよくしたもので、重炭酸塩の材料は水と炭酸ガスであるため、体内には豊富にあるのです。しかし、重炭酸塩を作るときには亜鉛を含む酵素である炭酸脱水酵素が働かなければなりません。亜鉛が不足すると予備アルカリが生産できなくなります。これが生産できない場合、また酸性度の多食が続いたような場合、これを中和・無毒化することが難しくなるため、体液が酸性側に傾きやすくなり、健康にも影響が及んできます。さらに、私たちが肉体労働をしたときに、老廃物として炭酸ガスができますが、これを組織細胞から肺へ運搬し放出するためにも亜鉛酵素が働くのです。また、アルコールの飲み過ぎは二日酔いを起こしますが、この時アルコールを代謝して無害化するのも亜鉛酵素なのです。
 ところで、健康な状態は血中カルシウムが十分で、かつ弱アルカリ性のときです。そのカルシウムの貯蔵庫、つまり不足したときの補給減として「骨」があります。私たちの骨格はコラーゲンというタンパク質の鋳型に、リン酸カルシウムが沈着してできたものです。この骨の材料のリン酸を付着するためには、これまた亜鉛酵素のアルカリ性フォスファターゼという酵素が働きます。そしてもうひとつ、生命にとって一番重要な遺伝子(DNA)を作るときに働く2つの酵素があります。それはDNAポリメラーゼとRNAポリメラーゼで、ともに亜鉛酵素なのです。
 また実験的に動物にカドミウムを注射しますと睾丸が萎縮します。しかし、亜鉛とともに与えたり、まえもって亜鉛を与えてからカドミウムを投与すると、睾丸の萎縮は起こりません。これは亜鉛の投与によって体内に生ずる亜鉛結合タンパクが、カドミウムに取り付いてその毒性を抑えるためと考えられています。カドミウムは亜鉛と一緒に存在することが多く、亜鉛を精製する過程でできる副産物として生成されます。つまり、亜鉛と同時にあることでカドミウムの害が抑えられている可能性が高いと考えられます。
 亜鉛はほかにも、水銀や鉛などの毒性も抑えます。よって亜鉛欠乏動物では重金属の害が強く現れるといわれます。また、亜鉛は精液、前立腺に高濃度に含まれていて性機能と密接な関係があること、亜鉛不足が味覚異常を起こすことはよく知られていますが、最近亜鉛が目の健康にもきわめて重要であることが分かってきました。亜鉛は体内で多くの酵素の重要な構成成分になっています。目では網膜細胞の酵素を活性化して、視覚情報を伝達する物質を作る働きをしています。そこで、亜鉛が不足すると視力低下をともなうさまざまな障害が起こるのです。
 日大医学部の石川博士によると、夜盲、白内障、角膜障害など高齢化社会になって増加している加齢黄斑変性症も、亜鉛不足が深くかかわっているといいます。黄斑部というのは眼球の奥にあって網膜の一番感度の高い部分で、ものをはっきりと見る中心的なところです。黄斑部には本来血管がなく、はっきりとものが見えるのですが、網膜の血液循環が悪くなると新しい血管ができて、感度が悪くなり視力が低下します。これが加齢黄斑変性症で、最悪の場合失明します。
 この病気は昔は欧米人に多かったのですが、近年は日本人にも増えているといいます。老化が根底にあるのですが、動脈硬化や高血圧症、糖尿病など血管障害を起こす病気が引き金になっており、タバコも血液の循環障害を起こすのでよくありません。石川先生はこれらに対して亜鉛を1日約34mg投与し、治療されています。米国の1日の所要量は15mgで、その2倍強にあたる量の亜鉛で治療効果は現状維持も含めて約8割に達するといいます。なぜ亜鉛が有効かといいますと、動物では亜鉛欠乏にすると網膜の色素上皮が真っ先に変性することが分かっています。網膜の色素上皮はものを見るうえで重要な働きをしており、亜鉛は網膜細胞の活性化に深くかかわっているのです。
 日本人の中途失明の原因としては、糖尿病性網膜症と加齢黄斑変性症が二大原因となっています。実験では、糖尿病になると網膜内の亜鉛濃度が低下することがはっきり分かっているといいます。とすると、視機能を強化するにはアントシアニンを多く含む「ブルーベリー」が役立ちます。また、ビタミンAも不足してはいけません。これらの栄養素の補給によって、目の老化は遅らせることができるのです。いずれにしても、食品の精白・加工食が増えている今日、亜鉛の価値はますます高まっています。亜鉛を多く含むカキ(貝)、小麦胚芽などを取るように心掛けたいものです。

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