ミネラルについて「ヨードは海草で」

 ヨードは海産物に多く含まれており、魚や海草をよく食べる日本人にこれが不足することはほとんどありません。しかし、海草を食べない欧米ではヨード不足を起こすことがあり、米国では塩にヨードを2万分の1くらい添加しているものもあります。ヨードが問題になったのは甲状腺腫が発端です。欧州や南米の山岳地帯では、海産物が入手しにくいためにヨード不足を起こし、その結果甲状腺腫になる人が多かったと言えます。
 甲状腺腫はノドの部分がモッコリと腫れてきます。一昔前は甲状腺腫になる人が何百万人もいたといわれ、その原因が分かったのは米国で5、6年かかって行われた大規模な実験からなのです。それは女学生を2000人ずつ2群に分け、一方にはヨードを与え、他方はヨードなしで生活する実験で、その結果ヨードを与えた群は甲状腺腫が発生したのはわずかに5人でしたが、ヨードなしの群ではその100倍の500人という発生率だったのです。これで甲状腺腫の予防には、ヨードが最も大切であることが分かり、米国では食塩に添加することが許されました。
 先にも述べましたように、ヨードは海産物に多く含まれており、日本人にヨード不足はないはずですが、近ごろは甲状腺腫の人を見かけます。若者の中には海草や魚をほとんど食べない人が増えているようですし、日本の塩はヨードを含んでいない精製塩なのでヨード不足を起こすのだろうと考えられます。ヨードは体内で筋肉や皮膚にも含まれますが、とくに甲状腺は他の組織の1万倍以上も濃くなっています。甲状腺腫にヨードがよいのは、甲状腺にヨードが取り込まれやすいからで、ヨードは甲状腺ホルモンの原料に使われるのです。
 ヨードはI-イオンの形で小腸を経て血中にはいり、甲状腺に取り込まれた後、ベルオキシダーゼの働きにより、過酸化水素の存在下でヨード分子I2に酸化され、非酵素的にチログロブリンという高分子のタンパク質のチロシン残基がヨード化され、甲状腺ホルモンの前駆体が生成されます。その後、甲状腺ホルモンであるチロキシオンやトリヨードチロニンへと誘導されます。
 また、甲状腺は体熱の産生にかかわっています。寒い時、体の代謝を高めて体温を上げるのは甲状腺の働きです。しかし、これが亢進しすぎるとバセドウ病(甲状腺機能亢進症)になり、目が飛び出す、動悸、汗が出る、痩せるなどの症状が出てきます。熱の産生が多くなりすぎて、熱の交換効率が悪くなりロスが多くなるのです。この時、血中のヨード値は高いのですが、甲状腺では正常値の10分の1くらいに減少しているのです。これとは反対に、甲状腺機能低下症では血液中のヨードはぐんと減っています。
 ヨードが不足すると新陳代謝が低下するため、患者はがんこな便秘に悩まされ、デブッとした太り方で、全体に元気がないのです。また脂肪などが血管にたまるため動脈硬化が起こりやすくなるのです。
 ヨードは生活習慣病の予防にも大切で、またセレンと同じくガンに対しても重要です。ヨードが注目されたのは、バセドウ病患者にはガンがきわめて少ないことからです。ガンのヨード療法というものがあり、肝油と海草エキスを飲ませる療法があります。外国でもヨード療法が行われています。ガンに対する栄養療法の基本になっているゲルソン療法では、ルゴール液と動物の甲状腺粉末が与えられています。つまり、無機のヨードと有機のヨードを与えてやるのです。ガンでは全身の代謝が低下しているのでヨードで高めてやるわけです。
 子供の時にヨードが不足すると発育不全になり、大人になってから不足すると、甲状腺腫や機能低下が起こります。これも体の新陳代謝が衰えているからで、ヨードにより代謝を高めるのですが、甲状腺粉末は使い方が難しく、機能低下の人でも取り過ぎると反対に機能亢進症になってしまうので、専門医のアドバイスのもとで行う必要があります。
 ヨード療法でも、初めから多量に与えると、甲状腺ホルモンが活発になりすぎて、副作用がでてきます。初めは、ごく少量から、慣らしながら増やしていく必要があります。ヨード不足の人では、ほかの微量元素についてもいえることですが、ヨードの吸収率は高まっています。そこへ多量のヨードを与えると一気に取り込まれ、副作用が出るのです。
 ヨードの吸収には腸内細菌も関係しています。ヨードは甲状腺ホルモンとして、胆汁を介して消化管内に排泄されますが、腸内細菌の働きでまた吸収されやすくなるのです。つまり、ヨードの再利用には腸内細菌も大切なのです。
 食べ物の中にはヨードの吸収を阻害するものがあります。それは大豆とその製品です。昔から、煮豆や湯豆腐には昆布が必ず用いられています。これは味の問題だけでなく、吸収率が悪くなるのを見越して、ヨード源を入れておいたものと思われ、昔からの知恵です。大豆の中のイソフラボノイドや大豆サポニンがヨードの吸収を邪魔するといわれ、そのほかにピーナッツやからしな大根、キャベツ、わさびなどのアブラナ科の野菜、タマネギなどもヨードの甲状腺への取り込みを妨げます。これらの中の辛味成分が邪魔をするようです。
 体のエネルギーは、細胞内のミトコンドリアで作られますが、ヨードはこの膜の透過性を高めて、酵素作用の活性が高まり、酸化が激しくなってATP(エネルギー通貨)を作りやすくするといわれます。体重70kgの人で平均12~20mgのヨウ素が検出されます。平素の食事で摂取されるヨウ素の量は0.1~0.2mgで、2mgで中毒症状を呈し、35~350gで死に至るといわれています。1日の必要量は成人で200~500µgといわれています。1986年にチェルノブイリ原発事故で甲状腺ガンが多発しているのは、放射性のヨウ素が多量に放出され、これが甲状腺に取り込まれやすいヨウ素の性質から、多発したといわれています。

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