ミネラルについて「マグネシウム不足は過労死に!」

 よくミネラルという言葉を耳にしますが、あなたはミネラルとは何かをご存じですか。案外、正確に知っている人は少ないのですが、炭素、窒素、酸素、水素以外の元素を総称してミネラルといいます。カルシウム、マグネシウムをはじめ亜鉛、鉄、銅、イオウなど約46種類以上があります。ちなみに劇物のヒ素といえども極微量は必要なのです。
 また、ミネラルがタンパク質や脂肪の燃焼を助けるには電気的に電離した状態、つまりミネラルがプラスやマイナスの電気を帯びたイオン化した状態でなければなりません。私たちの体は電気を取り入れているわけではないのに、なぜミネラルが電気的に電離した状態になるのかといいますと、人間の体の中で生体電圧が発生しているからです。私たちの体は燃焼機関であり発電機でもあるのです。
 ところが、体の中では電離しにくい物質もあります。これらは有害物質となりやすく、例えば健康のために大切なカルシウムでも、イオン化しないと血管にたまって動脈硬化を起こしたり、関節にたまってその動きを悪くしたりします。人の体の中では、カルシウムは硬組織(骨、歯)に約99%が含まれており、残りの約1%が血液や細胞内にあるのです。一般には、カルシウムは骨の材料と考えられています。マグネシウムも約50%くらいは骨に含まれていますが、カルシウムにくらべると少ないのです。
 骨と血液と細胞の中に存在するカルシウムの比率をくらべると、骨と血液が約1万対1、血液と細胞の中がまた1万対1となっており、骨と細胞内では実に約1億対1という大きな落差になっています。この落差が大切な働きをするのであり、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが見直されている理由でもあるのです。では、細胞の中にカルシウムがほとんどないのはどうしてでしょうか。人の体の細胞の中にはカリウムやマグネシウムが多く、細胞の外にはナトリウムやカルシウムが多いのです。
 細胞の中と外の成分の違いについて考えますと、海から生命が誕生した何十億年か前の海は、カリウムやマグネシウムの多い海だったといわれます。そこから生命が誕生しました。ところが、その後、大きな地殻変動が起こり、海の成分がガラリと変わり、いまのようにナトリウムやカルシウムの多い海に変わったという説があります。
 すると、カリウムやマグネシウムの多い状態で生まれた生命は、ナトリウムやカルシウムの多い状態では生きていけなくなり、細胞の外に膜を作って、浸透圧の差を防御し、細胞の生命を守ろうとするようになりました。それが細胞膜の誕生であるといわれています。よって、細胞の中にはカリウムやマグネシウムが多く、外にはナトリウムやカルシウムの多い体ができたといわれています。いずれにしても、その後単細胞生物から我々の先祖のムカシホヤへと進化し、細胞の内と外ではカルシウムには1万分の1という大きな落差があるようになったと考えられます。
 ミネラルの中でもカルシウムとマグネシウムは水の硬度と関わりが深く、近年いろいろと新しい働きが分かってきました。水の硬度は、含まれるカルシウムとマグネシウムの量によって決まります。日本の水はこれらが少ない軟水ですが、ヨーロッパの水は硬水で、セッケンで体を洗ってもほとんど泡立たない状態のところもあります。
 また、水の硬度は病気とも関係が深いことが、疫学調査の結果分かってきました。とくに虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)は水の硬度と関係が深く、硬度の低い水、とくにマグネシウムの含有量が少ない水を飲んでいる地方では、心臓病の多いことが示されています。カルシウムは血管収縮作用があり、その反対にマグネシウムは血管拡張作用があり、天然のカルシウム拮抗剤といえます。
 今日、過労死という言葉をよく耳にしますが、突然死を起こした人の血液検査を行うと、マグネシウムが非常に少ない場合が多いといいます。つまり心臓を栄養する冠状動脈が収縮し、心停止すると考えられるほど大切なミネラルです。マウスの実験でもマグネシウムを含まない餌を与えていると、体重の減少と心停止が起こることが報告されています。
 今日、カルシウム不足がよく議論されていますが、マグネシウムも非常に大切なミネラルで、虚血性心疾患の方、高血圧の方などはできるだけ多く摂取するようにしたいものです。

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