癌について「ガンは転移が恐ろしい」

 先週、オリゴ糖がビフィズス菌の腸における生息率の向上に威力を発揮することを述べました。(オリゴ糖を)どれぐらい食べればよいのかという質問がありましたので、少し触れます。オリゴ糖は主としてビフィズス菌に利用され、そのほかの有害細菌に利用されないという特徴をもちますが、いまのところビフィズス菌のみに利用されるオリゴ糖は見つかっておらず、飲み過ぎるとオナラが出たり、軟便、下痢になったりします。これはビフィズス菌以外の悪玉菌によってガスが作られるためで、取り過ぎはかえって害をもたらし、個人差もありますので注意して取る必要があります。
 では本論にはいります。ガン細胞は体の統制に従わず、自律的に増殖して肉体を蝕みます。また、ガン細胞は大きくなると周辺の組織を浸潤して働きを弱め、最後には多量の悪質液を出して、体を衰弱させついには命を奪ってしまいます。ガンには2種類あり、1つはガン腫でリンパ行性転移、もう1つは肉腫で血行性転移をします。おもに「ガン」とはガン腫をさしていいます。
 ガンで最も恐いのは、とめどもなく増殖を続けることよりも「転移」をすることです。ガンが転移しなければ病巣部を切り取ってしまえばよいのです。そこで、近年のガンの研究では転移防止が大きな研究テーマになっています。
 最近、富山医科薬科大学の済木育夫教授のグループによって行われた研究で、スピルリナから熱氷で抽出した「カルシウム・スピルラン」という成分に、ガンの転移を抑制する作用のあることが明らかにされました。この研究によると、皮膚ガンのガン細胞をラットの血管内に注入し、ガン細胞の肺転移実験において、カルシウム・スピルランを同時に注入したラットでは、用量依存的に転移が抑制されました。
 つまり、投与量が多ければ多いほど抑制効果が高く現れたのです。一方、あらかじめカルシウム・スピルランを経口投与し、つぎに皮膚ガンのガン細胞をラットの静脈に注入し、2週間後にガン細胞の肺への転移数を測定した結果でも、投与したカルシウム・スピルランの用量が多いほど転移は抑制されたとしています。この2つの実験によってカルシウム・スピルランのガン転移用量依存的抑制効果が実証されました。
 ガン細胞が転移するにはリンパ管に「付着・破る・活動」という一連のプロセスが必要です。そこで、カルシウム・スピルランがどの段階でガン細胞の転移を防止するのかを調べるために、ガン細胞の移動実験が行われました。その結果、カルシウム・スピルランは血管内のガン細胞の移動には関与せず、ガン細胞が血管壁に付着する段階を、濃度依存的に抑制することが判明しました。
 この場合、カルシウム・スピルランはガン細胞側に付着し、ガン細胞がリンパ管壁に取り付くのを妨げる可能性が高いのです。カルシウム・スピルランには坑ガン剤のような毒性はなく、安心して飲み続けることができます。また、ガン細胞がどこかの臓器に定着し、そこで増殖するためにはリンパ管の壁を破らなければなりません。これはリンパ管壁が丈夫ならば転移しにくいということになります。従って、平素から細胞間結合(デスモゾーム)を強固にする必要があります。
 細胞間は細かい繊維でお互い手を出して結合しています。ガン細胞は成長が早すぎるために、このデスモゾームも不完全で細胞がバラバラになりやすいために転移という現象が起こるのです。このデスモゾームを強固にするのに必要なものに、コンドロイチン硫酸があります。魚を煮炊きして放置しておくと煮こごりができますが、これがコンドロイチン硫酸の働きです。いうまでもなく、こういう食品的な有効物質は医薬品と違って、長時間取り続けることによって有効性が発揮されるものです。
 スピルリナはタンパク質が約6割を占め、ほかにβ-カロチンやビタミンA・B・Eなどのビタミン類、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル類を豊富に含んでいて、ビタミンCを除けば緑黄色野菜の代用に十分なりえるのです。さらに、スピルリナにはブルーの色素「フィコシアニン」が含まれていて、これは免疫機能を促進してガンの増殖を抑制する働きがあるといわれています。
 また、大根、かぶらなどの根菜類にもマクロファージを活性化するのに大きな働きがあります。スピルリナのリキュール酒などでのアルコール抽出物や根菜類、魚類を平素から取るように心掛けたいものです。

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