癌について「ガンは海藻ときのこでアポトーシスに」

 先週も触れましたが、一般に海藻にはミネラルが多く含まれており、健康長寿食といわれています。海藻のなかでもコンブやワカメのように褐色のものを褐藻類と呼び、これらに含まれる「U-フコイダン」という多糖類に、ガン細胞をアポトーシスに導く働きのあることが、最近明らかになってきました。
 コンブの約50%は炭水化物で、その大部分はアルギン酸、うち酸性多糖類のフコイダンの含有量は2~3%です。U-フコイダンにはガンを縮小する作用があるといわれています。これを確かめる実験を糖鎖工学研究所(弘前市)と宝酒造バイオ研究所(大津市)が、共同で大腸ガン細胞を用いて行った結果、24時間でガン細胞が半減、72時間後にはほぼゼロになったという劇的な効果があることを報告しています。
 一方、正常な細胞ではアポトーシスは起こらなかったといいます。また、U-フコイダンを入れなかったガン細胞は72時間で約10倍に増殖し、胃ガン細胞や骨髄性白血病細胞でもほぼ同じ結果であったといいます。つまり、U-フコイダンには抗ガン剤のような副作用がないのです。フコイダンにはほかにも、血管内で血液が固まるのを防ぐヘパリンよりも、強力な抗凝血作用の働きやコレステロール低下作用なども認められていて、生活習慣病(成人病)の予防に有効といえます。
 リンパ球のなかのキラーT細胞(細胞障害性T細胞)は、ガン細胞が発生するとこれをいち早く見つけ出して、アポトーシスに追い込みます。キノコ類に含まれている多糖類は、このキラーT細胞を活性化し、間接的にガン細胞にアポトーシスを誘発させるといわれています。霊芝、シイタケやカワラタケ、そのほか乾燥酵母の細胞壁、クマザサなど民間でガンに有効とされるものには多糖類を含むものが多いようです。これらもガン細胞のアポトーシスに働いている可能性が大きいようです。
 また白血球が生み出す生理活性物質にサイトカインがあります。そのなかの1つに腫瘍壊死因子(TNF=Tは腫瘍、Nは壊死、Fは因子)というものがありますが、この物質はガン細胞を殺すときに必ず出てくるのでこの名があります。ガン細胞にはTNFと結合する受容体がありますが、TNFはガン細胞に直接アポトーシスを起こさせて、これを殺してしまうことが分かってきました。
 Nの壊死(ネクローシス)はアポトーシスに相対する現象です。壊死というのは傷や炎症などによって細胞が死ぬ、いわば細胞の他殺ということです。最近までは、TNFによるアポトーシスがネクローシスと間違えられていました。なぜかといいますと、初めはアポトーシスによって細胞が死ぬと、その後血管の細胞もアポトーシスを起こし、出血によりその場の組織が壊れます。そのため破壊された血管では酸素や栄養が運ばれなくなり、その血管で栄養されている組織細胞はネクローシスに陥ります。この変化の方が大きく目立つため「壊死」と名付けられたようです。
 しかし、TNFによるガン細胞の死は、本質的にアポトーシスによると考えられています。また帝京大の山崎教授の研究によりガン細胞にアポトーシスをもたらすTNFが、野菜食によって増産されることが報告されています。それによりますと、キャベツ、ナス、ダイコン、ホウレンソウ、キュウリなど多くの野菜が抗ガン剤と同程度、あるいはそれ以上にTNFの増産を促すことが報告されています。また、TNFを増産するのは野菜類だけでなく、海藻、果物でもみられます。海藻ではヒジキ、コンブ、アオマフノリ、アカノリ、アカスギノリなどが、果物ではバナナ、ブドウ、ナシ、スイカなどに優れたTNF産生効果があるといわれています。
 このように野菜、海藻、果物類にガン細胞をアポトーシスに誘導するTNFを増産する働きが著しいことを考えると、菜食、和食を旨としている人には、ガンの発生率が少ないことがうなづけます。これには動物脂肪の多い肉類の摂取が少ないことも関係しているといわれます。数年前に野菜スープがはやりましたが、現代医学と併用すれば何もせずにいるよりは、確実にガン細胞をアポトーシスに導く力が増すのです。1日1食は海藻食や菜食を摂り、ガンをはじめとする生活習慣病の予防に努めたいものです。

mn48