肩から上肢の痛み・しびれ「しびれとめまいは水分に要注意!」

 頚、肩、腕の痛みやしびれの原因は多岐にわたっています。あなたは今まで電車の吊り革につかまっていると、上肢がだるくなり腕を上にあげていられなくなってきて、下げると症状がとれたという経験はありませんか。このような症状を呈する疾患に「胸郭出口症候群」があります。典型的な症状として、頚から肩・上肢にかけて痛みやしびれがあり、さらにコリやだるさ、冷えなどの神経・血管の圧迫症状を訴えるものです。多くは右側にくることが多いといわれています。
 「胸郭出口」で神経や血管が圧迫されます。胸郭というのは、肺や心臓などを取り囲んで保護している骨組織で、肋骨、胸骨、背骨よりなっています。この上の出口は狭くなっており、しかも前には鎖骨があり頚椎から肋骨に向けて前・中・後・斜角筋が走っています。時には頚肋(けいろく)といって、首の骨から突起が出て一種の奇形によりさらにこの出口を狭めることがあります。
 ところが、ここには首(頚髄)から出て肩や背上部、上肢へ分布する神経が集まり、鎖骨の辺りで腕神経叢を構成しています。同様に、上肢の上口のあたりで慢性筋肉疲労があったり、骨格の歪み、奇形などの形態異常があったりすると神経や血管に圧迫が加わり、さまざまな症状が起こることになるのです。
 こういう解剖学的な構造から、この症候群は一般にナデ肩の人に多いといわれています。これは胸郭に対し、肩が下がることが圧迫を強めるからです。また、手を上にあげて仕事をすることが多い人や、肩を強く後下方に圧迫する仕事をする人に起きやすいようです。筋骨隆々の人にも多くみられます。妊娠末期の婦人にもみられますが、末期の頃は腹が出て肩を後ろに引いた体型にならざるを得ないからです。
 胸郭出口症候群は一般に女性に多く、30歳前後が高発年齢です。しかし、老化に伴って二次的に発生するものもあります。これは年をとるにつれて増える傾向にあります。日常生活の注意として、とくにナデ肩、肩や手の筋力のない人は重いものを持ったり、軽いものでも長時間持ったりしないことです。寝そべって、肘をつきながらテレビを見て肩口を圧迫しないことです。
 また、とくに多い手のしびれの原因は、誤って転倒し手を後ろについて尻餅をかばった時に腕の筋肉がずれることによって、腕の神経を圧迫ししびれを引き起こすケースが意外に多いようです。治療方法として、ずれた筋肉を正常な位置に治すことがまず大切です。しかし、残念なことには現代医学にはこのような概念がありません。そのため、あちらこちらの病院や接骨院、あんま、マッサージに通うことになります。
 筋肉の位置異常を治すのに効果があるのは温熱療法で、病院などではホットパックや超音波療法が行われます。ご自分でされる場合はビワの葉湿布が効果的なようです。温熱によって、筋の緊張が緩み、血管が拡張して血流改善やビワの葉の鎮痛効果が期待できます。湿布は前胸部、肩背部、頚部を各10~20分間くらいずつ温めます。
 また頚椎の枝突起から起こって、第一肋骨(胸郭の出口の骨)に停止する斜角筋の間を、手に向かう神経や動静脈が通るので、これが緊張・萎縮すると痛みやしびれが起こります。もう一つは、前胸部を広くおおっている大胸筋です。この筋は上腕の内転、内方回転の主動筋で、これが緊張するとやはり胸郭出口や腋窩において神経や血管が圧迫を受け、症状を起こすことになります。この筋を緩めることは喘息、気管支炎、胸部痛にも有効で、症状がひどい時は胸鎖乳突筋も関係します。よくもみほぐして慢性筋肉疲労を解し、それに加え、血液の流れが悪くなっていますからまずクラスターサイズの小さな水(注)を採ることが大切です。
 また、ビタミンEは血管拡張作用があり、しびれに対してはビタミンB群が有効です。漢方ではしびれはめまいと同様、「水証」といわれており、果物の食べすぎ、甘いものや塩辛いものは控え、清涼飲料水なども控えめにされた方が良いでしょう。利尿効果のあるカリウムが多い緑黄野菜などを十分採り、手に浮腫があるなら温浴41~42度、冷浴15度に交互につける温冷浴をお勧めします。
 とくに注意しなければならないのは、頚部脊椎症と混同して、首の牽引が行われることです。かえって悪化することが多いので絶対に止めていただきたいと思います。
(注)クラスター=複数の水分子が結合してできるブドウの房状の集合体のこと。これが小さいほど良い水といわれる。

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