ストレスについて5「酸素は善でもあり悪でもある」

 現代は複雑に発達した社会であり、ストレスを避けて通ることはできません。ストレス学説を発表したカナダのセリエ博士は、ストレスに対する体の反応を(1)警告期=体がストレスに直面してあわてふためいている時期 (2)抵抗期=ストレスを受け取めこれに積極的に対応する時期 (3)疲憊(ひはい)期=体がストレスに負けて抵抗していけなくなる時期の3つの時期に分けています。このように経過するなかで、ストレスによるさまざまな症状が現れてきます。
 まず高血圧。ストレスがかかると血圧が上がってきます。ストレスが除かれれば下がりますが、年を取るにつれて、その反応は鈍くなり、若いときならすぐ下がった血圧も加齢とともに適応能力が低下し、高血圧になることもあります。ストレスは呼吸器や循環器、消化器、免疫系などに影響を及ぼしやすく、胃や十二指腸の潰瘍、気管支ゼンソク、アトピー性皮膚炎などを誘発、悪化させやすいといわれています。
 それに加え、もうひとつ大きなストレス源として注目され、今後問題になってくると思われているのが「酸化的ストレス」です。酸素というのは本来は安定した分子ですが、一度活性化されると活性酸素になり、これがもたらす酸化現象は生体にとって大きなストレスとなります。この酸化的ストレスと、先のストレスとをもってすれば、すべての病気の原因が説明できるともいわれている程です。
 酸素は生命が誕生する頃の原始地球では、いまの1万分の1ぐらいだったと考えられています。すなわち大気の大部分は窒素、炭酸ガス、それに水蒸気で、酸素はほとんどなかったようです。したがって、このような状態では生物はエネルギーを嫌気的な発酵によって取り出していました。大気中の酸素が少しずつ増えてきて、いまの大気の100分の1くらいの濃度(パスツール点)になると、好気的な発酵を行う生物が出現してきたのだといわれています。エネルギーは酸素を用いて作った好気的な発酵の方がずっと多く取り出すことができるのです。
 そして、約28億年前にスピルリナのような藍藻(らんそう)類が出現して、太陽の光を用いて光合成を行い、大気中に酸素を放出するようになりました。ただし、この酸素ははじめは地球に含まれる鉄を酸化するために使われ、大気中の酸素が増えるには至らなかったと考えられています。
 それでも、長い年月を経る間に少しずつ酸素が増え、現在の大気の10分の1くらいにの濃度になるとともに、大気中にオゾン層が形成され有害な紫外線がさえぎられるようになり、生物が陸上に上がり繁栄するようになりました。これには好気的代謝によって、エネルギーを効率良く取り出されるようになったことも助けになっているのです。
 しかし、そういう有利な点がある反面、代謝の過程で生じた活性酸素によって酸化現象を起こすという不利な面もあるのです。活性酸素は反応性の強い酸素で、油を酸化させて過酸化脂質を作ったり、老化を促進したり、また細胞の核のDNAを傷つけたり、炎症にかかわったり、さまざまな病気の原因を作ることが今日指摘されています。
 太古の昔、生物は酸素の少ない環境に生息していました。体の奥の方はいまでも酸素の少ない状況にあるのです。本来、酸素は体にとって脅威の存在なのです。酸素がなければ困りますが、脅威の存在であるという相反する面をもっているのです。生物はこういう酸素からの攻撃に対して、しだいに防御機能(抗酸化作用)をととのえ、そのうえで酸素をうまく利用して進化を続けてきました。
 人体内で抗酸化作用を行っている物質のひとつが尿酸です。尿酸は多すぎると痛風の原因になりますが、これはかなり強い抗酸化力をもっています。ストレスが強いと尿酸値が高くなります。体の酸化的ストレスに対抗するためであると考えられます。血中の尿酸値が高くなりますと、結晶化し関節にたまって痛風発作を起こすことがあります。
 これを防ぐには、ストレスの強い人はビタミンAを取る必要があります。ビタミンAには尿酸が結晶化するのを防ぐ働きがあり、さらに抗酸化作用のあるビタミンC-E-A-B2やβ-カロチンなどを多く取っておくとよいでしょう。これらの抗酸化物質が体内に多くあれば、尿酸の合成は少なく痛風結節の心配は軽減するでしょう。

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