ストレスについて4「ストレスがないとアレルギー性鼻炎になりやすい」

 ひどい暑さは、体にとって大変なストレスとなります。生物には至適生育温度というのがあって、気温が上がると「熱ショックタンパク」を作ってストレスに対抗します。このタンパクは高温状態で誘導されて合成されますが、これ以外にも「ストレスタンパク」というものが、化学物質や放射線などのストレスに対して作られます。
 つまり、外的刺激に対応するために作られるわけで、例えば外から細菌が侵入してきたときにも、ストレスタンパクは作られ細菌が増殖するのを防止します。また異物を含食する細胞に対して、早く集合してきて異物を片付けよという指令を出すなど、さまざまな作用をします。興味深いことはストレスの種類が変わっても、引き起こされる応答には共通の面があるということです。
 以上のような物理化学的な刺激に対してだけでなく、精神的な変化に対しても特殊なタンパクが作られます。例えばマラソン選手が42キロメートルあまりの長い道のりを走ることを考えてみましょう。ふだん練習していない人が走れば、ただ苦しいだけです。ところが、練習を積んだマラソン選手ではそれが快感に変わります。いわゆる「ランナーズ・ハイ」といわれる陶酔状態が起こるといわれています。
 マリファナなどドラッグを飲んでハイな気分になったのと同じような状態になるのです。これは長く走ることによって、脳内麻薬様物質(内因性モルヒネ)が作られてくるからです。モルヒネを打つとやめられなくなるのと同じように、マラソンもやめられなくなるのではないでしょうか。脳内麻薬様物質にはエンドルフィン、エンケファリンなどの種類があり、ハリ麻酔はハリによって脳内麻薬様物質が増産され、痛みを押さえることができるからです。内因性モルヒネ物質は麻薬性鎮痛薬と同様、鎮痛作用ばかりでなく、視床下部の報酬系に作用して快感誘発作用なども発揮しているのです。
 では、なぜ、このような脳内麻薬物質が発見されたかというと、モルヒネのような麻薬が効くということは、脳の中にこれを受け取るもの(受容体)があると考えたからです。モルヒネはもとから体内にあるものではありません。とすると、体の中にはモルヒネに似た物質があるはずです。よってその受容体があるのでは、ということから研究が始まり分かったのがエンドルフィンやエンケファリンなどの脳内麻薬様物質です。この脳内麻薬様物質は痛みを抑えるだけでなく、快感を誘う働きもあり、マラソン選手にハイな気分をもたらしたり、マゾヒストでも分泌されるといわれます。このように苦痛のストレスがかえって快適なストレスに変わることもあるのです。
 あまり過剰なストレスは病気の原因となります。ではストレスは少なければ少ないほどよいのでしょうか。それは間違いです。冷暖房が完備して、紫外線をカットし、空調の行き届いた家で暮らしていると快適かもしれませんが、身のまわりにあるさまざまなストレスに対する抵抗力が低下してきます。これがアレルギー性鼻炎の原因になっているのではないか、という学者もいます。
 統計的にもアレルギー性鼻炎は糞尿処理に関係があるといわれています。つまり、トイレの水洗化の割合が高くなるにつれて、アレルギー性鼻炎が増えているとする統計があります。アレルギー性鼻炎の患者はIgE抗体が高く、これはもともと回虫などの寄生虫に対する抗体であります。ところが、トイレの水洗化によって寄生虫がほとんどいなくなったため、IgE抗体は鉾の向け先がなくなったのです。
 国立公衆衛生研究所の発表によると、東南アジアなどの低開発国ではIgE抗体の値がすごく高く、日本のアレルギー患者の値の比ではないのに、アレルギー性鼻炎がほとんど起こらないと報告されています。しかし、日本でアレルギー性鼻炎の患者が多いのは、IgE抗体はもともと寄生虫を排除するための抗体でしたが、いまではその敵がいなくなってエネルギーが余っていて、それをどこに出すかでアレルギー性鼻炎、気管支ゼンソク、アトピー性皮膚炎になったりするのであって、エネルギーが余っている以上、しかたのないことであるとの説もあるのです。あまりストレスを排除した快適な生活というものも考えもので、適度なストレスが必要なようです。

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