歯ぎしりについて「脳卒中にご用心」

 あなたは歯ぎしりをしていませんか。当然のことながら、歯ぎしりをしている人は自覚がないのですが、その証拠として歯と歯がすれることにより前歯や犬歯の先端部欠損があります。これを咬耗といいます。頬の赤い子供は多かれ少なかれ歯ぎしりをしています。鏡をみて歯のすり減り具合をチェックしてみて下さい。歯科の分野では、夜間の睡眠のさいアクチベータというマウスピースのような装置を口腔に入れて歯ぎしりの防止をしています。これもひとつの方法だと思いますが、それではなぜ歯ぎしりが起こるのでしょうか。
 よく「あと少しだ、歯を食いしばってがんばれ」といいますが、人は頑張る時には口を閉じ歯を食いしばります。スポーツ選手の歯が悪くなりやすいのは、この食いしばりによることが大きいのです。これは人が何かをする時には、まず足場が安定をする場所を選び、次に歯を食いしばって頭頚部の筋肉を緊張させることにより、首の安定を図るためです。その場合、口を開けていられないことはおわかりでしょう。また逆に足場の不安定なところでは、口を閉じていると全身の筋肉が緊張するため、バランスがとりにくく、無意識に口を開くようになります。
 寝るために人はおおむね安定した場所を選びますので、口を閉じることができ、鼻呼吸が本来しやすい状態になっているはずです(いびきについて参照)。また、人は悔しい時や身の縮む思いをした時、背中を丸めあごを後方に引き歯を食いしばります。つまり、何らかのストレスを感じますと、体の安定を一番力のかかるところ、つまり噛む力に依存する傾向にあります。寝ている時、とくに浅い睡眠時には夢をみます(朝目覚めた時に記憶があるとはかぎりません)。その夢がストレスを感じるような内容ならば、歯ぎしりになって現れてもおかしくありません。
 あるいは、咬筋をはじめとする咬合筋群に慢性疲労がある場合も考えられます。たとえば、首が凝った場合などに首を回したり、ストレッチングをすることがあると思います。この動作は首の慢性筋肉疲労を軽減し、脳内血流循環を改善するために行っている動きなのです。つまり、慢性筋肉疲労に陥った咬合筋群をストレッチングすることにより、その疲労を取ることを無意識に行っている筋肉の弛緩運動であると考えられます。しかし、疲労がうまく取れる場合と、逆により一層増す場合もあります。
 もうひとつの考え方としては、どこかの遠隔部位に、慢性筋肉疲労に陥った筋肉とか、筋肉の位置異常があり、それが咬筋に筋反射してその疲労が徐々に蓄積され、その結果咬筋をストレッチングする目的で歯ぎしりが起きるケースもあります。さらにもうひとつの考え方として、どこかの遠隔部位に筋肉の異常があるけれど、筋反射がない場合、遠隔部位の異常による痛みなどを代償する目的で、無意識に睡眠中にもっとも負荷を加えることのできる咬合に依存し、歯ぎしりという形で現れることも考えられます。元の痛みを忘れるという代償性の歯ぎしりです。
 以上、これらの治療法として精神的ストレスによる場合は、メンタル面での治療、たとえば催眠療法、カウンセリングなどが適し、咬合筋の慢性筋肉疲労の場合には咬合筋群をよく揉みほぐし、筋硬結(トリガーポイント)を取るようにしています。また、遠隔部位から起こっている場合であれば、最終的にはその原因となっている遠隔部位の異常を治癒しなければなりません。
 たとえば足首とか仙腸関節とかが傷害を受けている時などは、悪い状態のまま放置いたしますと、頭部への血流の循環が悪くなり、脳貧血状態になります。その時には脳内麻薬様物質が分泌され、交感神経より副交感神経優位になり、筋硬結のないところの筋肉は弛緩します。と同時に、突然、脳の血流が良くなりますので、脳内の血管に動脈硬化があり、なおかつ、高血圧ならば脳内出血の危険性が増大するといえましょう。

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