血圧は時々刻々変化している「朝の目覚めの時が”魔の時間帯”」

 あなたの血圧はいつも同じだと思っていませんか。体には生体リズムがあります。そのなかでも血圧はおおむね昼高くなり、夜は下がるという日内リズムがあります。心拍数も同様で、昼は多く夜は少なくなるのです(第9回参照)。
 日内リズムの幅は若い人ほど大きく、歳をとるほど小さくなります。さらに心臓病や糖尿病などでは、このリズムの変動幅は明らかに小さく、また、本態性高血圧のみでは血圧のリズム(昼高く、夜低い)は見られますが、これに腎臓病や脳血管障害、心臓肥大などを伴いますと、日内リズムが見られなくなるといわれています。さらに、自律神経機能の障害を伴った高血圧では、昼よりむしろ夜の方が高くなり、昼と夜の逆転現象が現れることも明らかになりました。このように血圧と日内リズムの間には深いつながりがあるのです。
 WHO(世界保健機関)の診断基準では、従来は高血圧を最高血圧160mmHg、最低血圧95mmHg以上としてきましたが、最近は判断が厳しくなり、最高140mmHg、最低90mmHg以上を高血圧とすることになりました。その中間は境界型高血圧と呼ばれています。こうしたことからも血圧は、世界的に重要視されてきているといえます。
 血圧は時間を変え、安静にして何回も測定してみる必要があります。また、医師に測ってもらう時、緊張して血圧が高めにでることがあり、これを白衣性高血圧といいます。その場合、平均して最高が25mmHg、最低が12mmHgも上昇し、心拍数も毎分5~10拍ほど増えるといわれていますので、ふだんは正常の血圧でも医師に測ってもらうだけで、高血圧と診断されてしまう可能性もあります。そこで血圧降下剤を服用しますと、夜中などに血圧が下がり過ぎてしまい、狭心症や脳梗塞が誘発されるおそれがありますので、注意が必要です。
 また、睡眠から覚醒のリズムは血圧とも深いかかわりがあります。血圧は睡眠とともに低くなり、寝入りはながもっとも大きく下がり、だいたい昼間の20%ぐらい下がります。これは血圧を下げることによって、心臓や脳、腎臓などの負担を軽くし、これらの内蔵を休息させるための大切な現象なのです。こうして夜下がった血圧は、明け方が近づくと少しずつ上っていき、起床とともに一過性の著しい上昇が見られます。高血圧の人は、これが心臓発作や脳卒中の引き金になると考えられています。
 血圧降下剤を使う場合は、夜中の血圧を下げ過ぎないようにし、朝方の血圧上昇をいかに抑えるかが治療のコツといえます。これは高血圧のみならず、狭心症や心筋梗塞などの心疾患にもあてはまり、いずれも起床後数時間の間に起こりやすいのです。心臓突然死いわゆる急死もこの時間帯に多く、まさに「魔の時間帯」なのです。起床とともに急に増加した血圧や脈拍は、睡眠中に呼吸や汗により水分を失っているため、この時間帯の血液はまだ粘っこくて固まりやすく、酸素などが溶けにくく、心臓に血液を送る冠動脈の血流量は減り、虚血が起こります。そのため、狭心症の発作が起きやすくなります。
 肺は酸素の交換のほかに水分の放出と摂取を行う組織であるため、睡眠中の湿度は非常に大切で、呼吸により肺から水分を補給できるように工夫することが望まれます。例えば、濡れたタオルを掛けておくとか、洗面器に水を張るとかして保湿を心がけて下さい。今のように気温が低く、乾燥している冬などに、起きてすぐトイレでひとがんばりしますと、その結果が悲惨なものになるのは想像に難くありません。
 しかも、この時間帯は痛みの感覚が鈍く、狭心症が起こっていても胸の痛みを感じにくい傾向にあるといわれています。データによりますと、約75%の人が痛みを感じないとされています。上手な目覚め方、起き方の章を参照して、高齢者の方は床の中で起き上がる前に、せめてぬるま湯200ccぐらいは摂取し、その後5~10分は横になったままで、すぐに起き上がらないように気をつけて下さい。次回はいびきについて述べる予定です。

mn19
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