枕による身体の力学的対応「枕の使用法の過ちは不眠症や肩凝りを助長する」

 人は寝ているか起きているかの、どちらかしかありません。あなたは自分の枕に疑問をもたれたことはないでしょうか。朝、目覚めると昨日よりも肩が凝っていたとか、余計に疲れていたとか、寝違えたとかいうことはありませんか。
 この現象の多くは、睡眠時に慢性筋肉疲労が解消される個所と、そうでない個所の差が生じるために起こると考えられます。そして、うまく寝返りできないような枕の使い方、余分なところに応力がかかるような枕の使い方をしている人が多いようです。「枕を高くして眠る」とは、安心して眠るという意味に使われますが、ストレス、例えば「身が縮まる思い」をした時には、腹面の筋肉が緊張し背中を丸める状態になり、大の字にはなりにくいのです。それを横から見ますと、高枕をしているのと同じ状態なのです。つまり、ストレスの多い人は、高い枕の方が寝やすいのです。
 しかし、この状態は気管支や横隔膜を圧迫して酸素不足を助長します。その上、首の回りには内頚動脈、外頚動脈をはじめとする大小さまざまな動脈、静脈、リンパ管が、脳に栄養を送るため縦横無尽に走行しています。この場所に凝りがあると、一部分の循環器系は圧迫されて局所的な循環不全に陥ります。その結果、軽い脳貧血状態、もしくは軽い脳浮腫状態になります。
 これは重大なことで、深い睡眠時は浅い睡眠時よりも脳血流量は減少しますが、それは生理的な脳貧血状態であり、病的な貧血状態とは異なります。病的な脳貧血状態は、浅い睡眠時と深い睡眠時における脳貧血状態の差がほとんどなくなります。それに加え、β-エンドルフィンなどの貧血から守るための脳内麻薬様物質の分泌が局所的に多量、少量の差を生じる結果となり、浅い睡眠、深い睡眠の周期的な繰り返しがスムーズにいかなくなります。
 それでは、どのような枕を使用すれば心地よい睡眠が得られるのでしょうか。人間の背骨はS字状に湾曲しています。この構造は人間が直立二足歩行する際に、重い頭を支え上下・左右・前後の運動に対してバネのような働きをし、脳を保護するのに適した構造をとっています。この構造がくずれ、例えば腰が曲がり始めますと、前の運動には問題ありませんが、上下・左右・後の運動に対しては脳を保護するのに適した構造とは言い難くなります。それを予防するためにも、睡眠中の寝返りは重要な働きをします。寝返りが自由にでき、その際、余分な応力がかからないような枕が理想的といえます。
 あなたがいま使用している枕は高すぎたり、低すぎたりしていませんか。高すぎる枕は首(頚椎)を「く」の字に後ろに折り曲げ、第一頚椎、第二頚椎に応力がかかり、頚椎をけん引してしまいます。これは、下顎を後ろに引く力となって働きます。その際、気道は狭くなり胸郭も狭まります。低すぎる枕は頭の重みで首を「|」の字にする方向に力が働きます。これも頚椎をけん引するのと同じ働きです。つまり、そのけん引力は頚椎の骨破壊につながります。例えば、鞭打ちなどで頚椎をけん引する場合がありますが、おおむね頚椎の骨破壊をともなっています(このことについては改めて述べます)。
 そこでどのような枕がよいかといいますと、仰臥位(仰向け寝)で一番応力のかかるところは、肩胛骨から肩にかけてであり、二番目は頭ではなく首にかかりますので、S字状の湾曲した枕を用いることが理想的です。こうすることにより、寝返りを打つときの力の中心は頭ではなく、背中、もしくは肩になり、こうした枕は接触面積が広く、単位面積あたりの応力が少なくてすみます。これは大変重要です。例えば枕をS字状に湾曲させるため、タオルケットや毛布などを枕として利用するなどで、寝返りによる横寝にもできる限り頭だけに負担をかけないようにすることが大切です。この認識にたって、背骨と同じようにS字状の湾曲をした枕がよいといえます。
 あなたが真っすぐに背骨を伸ばして立ち、それを横から見たシルエットをなぞり、それに対応した枕がほぼ理想的であります。次回は指吸いとおしゃぶりの違いについて述べる予定です。

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