上手な寝付き方「極度の疲労がポイント」

 不規則な睡眠で健康を維持するためには、上手な寝付きや起き方が工夫されなければなりません。昼間、身体を十分に働かせるのに都合のよい交感神経優位から、入眠時に都合のいい副交感神経優位へと上手に移行させる方法や、逆に交感神経、副交感神経ともに抑制された深睡眠の状態から、昼間の交感神経興奮状態へとスムーズに移行させる方法が大切です。
 健康な身体をもった人は、誰でも生まれながらに無意識にその方法を行っています。ところが、全身の筋肉に疲労をため過ぎたり、あるいは睡眠時間が短すぎてまだ深睡眠の最中に無理に起こされた時は、その移行がスムーズにいかず、その結果不眠症に陥り、翌日以降体調をくずしたりします。また一時的には何も不調を感じることがなくても、慢性的に疲労を蓄積し、時には突然死したりすることさえ起こります。
 一般的に人間の身体は朝から夕方まで、昼間の太陽の光や人間が活動する時に生じる生活音や車などの騒音に刺激されて目覚めているのであり、また眠気はそれらの中断によって、身体の筋肉が弛緩するとともに訪れます。そして、身体を横にすると同時に、脳内麻薬様物質β-エンドルフィンなどが分泌されて睡眠に陥るのです。
 ところが、精神的ストレスや労働などによって、全身の筋肉がある程度以上に疲労していると、そこからの刺激が脳に送られて、大脳皮質?視床?視床下部?脳下垂体系と刺激され、副腎髄質からのアドレナリンの量が増し、全身の筋肉や交感神経が優位となり寝付かれなくなるのです。これが不眠症の原因です。
 この時、子供は泣きわめき、暴れ回り、全身の筋肉を極限まで疲れ切らせ、それにより筋肉を弛緩し寝入るようになります。先週も触れましたが、筋肉は弛緩する時に一度収縮してから弛緩するという作業を行います。子供は無意識的に全身の筋肉を一度収縮させることにより、その後筋肉を弛緩させているのです。
 しかし、大人は疲れたまま寝ようと試みますが、ある程度の疲労連縮を起こした筋肉は容易に弛緩しません。大脳は刺激されたままで、余分なことを考え眠気がさしてきません。やっと寝付けたとしても、全身の多くの筋肉が疲労連縮したままでは、浅い眠りから深い眠りに移行することができず、翌日の朝まで疲れを持ち越す結果になります。そして、徐々に疲労連縮した筋肉が全身に広がり、疲労がいつまでも取れない身体になるのです。とくに、頭と頚の付け根(頚椎1~2番と後頭部をつなぐ)の部分の起立筋群が疲労硬直している場合は、全身の交感神経の興奮が治まらず、傾眠のきざしがあらわれてこないのです。
 そのような時は頭と頚の付け根を少し揉み解し、その後約30分から1時間、精神的ストレスを解放脱却させて、五感に感じる刺激を最小限にし、全身の筋肉を無意識に弛緩させ、副交感神経を優位にすることが必要になります。その結果、全身の血行がよくなり、身体は温まります。また、日頃からリラックスできる好きな音楽を聴いたり、趣味のことを考えることも役立つものです。
 それに加えて、全身の筋肉に意識的に力を強く入れ、耐え切れなくなるまで入れ続けた後に、ゆったりした気持ちで脱力する方法を3、4回繰り返してみることが、弛緩に役立つ場合が多いようです。ただし、高血圧の方は血圧が一時的に上昇しますので、注意が必要です。
 この時の姿勢としては、心臓よりも高い位置に頭部がある方が、重力により脳内の血流量を少なくさせるのに有効で、さらに脳細胞を酸欠状態から守るために脳内麻薬様物質の分泌が多くなります。ゆえに横になって行うより、座位で行う方が脳を酸欠状態にするのに効果的であり、傾眠が早まります。傾眠のきざしがあらわれてきたら、すぐに睡眠の体制にはいるのがよいでしょう。次回は上手な目覚め方について述べる予定です。

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