浅い睡眠は記憶に役立ち、寝返りは慢性筋肉疲労をとる「発明と疲労回復は寝ている間に」

 現代医学が提唱する深い眠りが「覚えたことを忘れさせない力を持っている」というのは、必ずしも正しいとはいえません。むしろ、極短時間の眠りや浅い眠りが、脳の中の混乱した多くの情報を整理してくれる役割を持っているのです。
 夢のようなまどろみの中で大脳は何度も無意識の内に古い情報との交流を行い、単純で納得しやすい情報のみを脳の記憶中枢の中へ送り込んで、記憶を確かなものにしていくといわれています。そして重要な情報のみ思い出そうとすれば、何度でも思い出せるように整理していきます。浅い眠りこそが脳の休息や情報の整理に重要なのです。
 このような眠りの作用が浅い睡眠の中にあるからこそ、著名な発明家が夢の中で最も重要なアイデアを思いついたと述べているのも当然のことであります。ところが、浅い眠りがマイナスに作用することがあります。とくに、短時間の睡眠中に深い睡眠がとれずに浅い睡眠のみになってしまうと、ストレス度の強い情報のみが整理され、それが記憶中枢の方へ送り込まれるようなことが起こります。
 短くても深い睡眠がとれないと、十分な脳神経の休息がとれず、混乱した脳神経で何度も情報を繰り返すために、時には幻覚も入り交じりマイナス思考のみが整理されてしまうのです。このようになった人達は不眠を訴えたり、もしくは不眠が気が付かなければ精神病になってしまう可能性が高いのです。十分注意しなければなりません。
 さらに、浅い睡眠は自律神経と筋肉疲労の調整をも行っています。浅い睡眠、とくにREM睡眠は自律神経の調整を図り、疲労した筋肉群の血行を順次良くしていく重要な働きがあります。浅い睡眠の最中には、副交感神経(休むときに興奮する神経)が興奮し揺り動かされ、また無意識下に脊髄反射(脳まで至らずに行われる早い反射)が亢(こう)進し、疲労連縮を起こしている筋肉群を反射的に緩め血管を拡張させ、疲れた筋肉群の血行を良くするのです。
 これはいうまでもなく、自然治癒能力のひとつです。従って、浅い睡眠時のREM運動(眼球がグルグル動く)などは極めて重要で、浅い睡眠中の寝返りはなどは健康を維持するために重要なものといえます。
 一般的な常識では、行儀の良い眠りが健康にも良いと考えられているようですが、そのような考え方は間違っています。夜中に何度も眠りを打つことにより、順次全身の疲れた筋肉群を緩め血行を良くしていくのが、浅い睡眠と深い睡眠の繰り返しの最も重要な作用であります。このような働きがあるからこそ、疲れた人ほど夜中に寝返りをよく打つのです。
 例えば、子供の運動量は大人と比較すると数倍に達し、それにともない筋肉の疲労度も大きく、従って子供の寝返りを打つ回数は非常に多くなります。また、寝相が悪いと姿勢も悪くなるという人もいますが、そのようなことはほとんどなく、例外としてある一定方向に向き続けている場合にのみ、顎の変形などが生じる場合があります。
 一般的には姿勢が悪くなるのは寝相が悪くと骨が変形したりするためでなく、疲労した筋肉が縮んで延びないためであり、疲労した筋肉の血行が良くなり、延びてくれば自然に姿勢は正されてくるのです。むしろ、横になったり、うつぶせになったり、大の字になったり、寝返りを繰り返すことによって、水が高いところから低いところへ流れるがごとく、体内循環もまた順次内蔵の重要臓器への血行を良くしていくと考えられます。
 よって一定方向に向き続けている場合を除き、子供の寝相の悪さを治すようなことはしないように注意しなければなりません。次回は睡眠中の自律神経の反応について述べる予定でいます。

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