鼻呼吸の重要性について「口で息を吸う癖は万病のもと」

 「病とは心身のゆがみやひずみ及び矛盾の自己表現であり、それ自体が合目的な本能で問題を解決しようとする営みそのものである」。私は病気をこのように定義したいと思っています。
 その自己矛盾のひとつに口呼吸があります。口呼吸とはアトピー性皮膚炎、花粉症、ぜんそく、ネフローゼ、膠原病(リウマチ等々)など免疫系の病気や顎関節症などと深い関連があるということをご存じでしょうか? 「えー、そんな馬鹿な」と驚かれる方が多いかと思いますが、事実です。
 「口で息をする」というのは人間だけであり、人類が言葉を話すようになったために、声門のある咽頭が鼻腔から遠ざかり、声を出しやすい位置にまで移動した結果起きた構造欠陥なのです。哺乳類は、人間以外は通常、口で呼吸できない構造となっています。従って、口呼吸は人類特有の疾患を発症する危険性をもっていると考えられます。
 犬が口でハーハーしているのは、犬には汗腺がないために息を吐いて体温を下げているだけで、息は鼻から吸っているのです。動物の中で、人間だけが気道と食道が交差していることにより、鼻の代用に口も気道に使うことが可能なのです。
 口呼吸と関連の深い病気としてほかには、乾せん、湿疹、関節炎、重症筋無力症、ある種の白血病、悪性リンパ腫などで、おもに副腎皮質ホルモンで治療されてきた病気があげられるようです。これらは人類特有の疾患と考えられ、自然に近い環境で生命活動するほかの哺乳類ではほぼ見られないものです。
 ある種の自己免疫疾患が親から子、子から孫へと垂直伝播するネズミがいますが、後天的に自己免疫疾患に陥るのは人類だけであり、人類が持つ気動の構造欠陥による口呼吸が引き金になっている可能性が高いのです。
 喉は細菌やウイルスをはじめさまざまな感染物質が空気とともに入ってくるため、粘膜の下に免疫の中枢であるリンパ組織(細菌などを退治し体を守る器官)が発達することによって喉を守っています。
 少し専門的になりますが、扁桃腺やアデノイドなどは「咽頭扁桃リンパ輪」といわれるもので、発見者のワルダイエル博士(ドイツ)は「すべての病的現象はこのリンパ輪の感染に始まる」とさえ述べているほど大切な組織であります。この扁桃リンパ輪が口呼吸で痛めつけられたり、傷ついたりすると、免疫システムが誤操作を起こし、「自己免疫異常」が起きやすくなると考えられます。また、甲状腺が腫れることもあり、胸腺や腎臓、副腎にも影響するといわれています。
 よって人類は休養のため眠っている間にも、口呼吸により免疫系に障害を受ける特殊な哺乳類ということになります。かたや鼻は「加湿器付き高性能空気清浄器」といわれるほどで、鼻呼吸をしても鼻の微細な繊毛の粘膜が守ってくれ、直接のどを痛めることはありません。また、鼻呼吸を行うことによって、脳の下界への窓口である臭覚神経が刺激され、免疫系はいきいきしてくるといわれています。
 私の友人に岐阜大学農学部獣医学科教授で外崎という、臭覚において世界的権威の教授がおられます。彼がまだ若いころ、臭覚細胞を破壊したときに味覚がどのように変化するのかを実験しようとして、ラットの鼻を閉鎖しました。その結果、ラットはすべて窒息死したそうです。彼、曰く「鼻を閉鎖しても生きていけるのは人間だけだ」と言っていたことを思い出しました。
 今回は口呼吸の危険性について述べました。次回はあなたが鼻呼吸か口呼吸かを判断する簡単な方法と対策について述べる予定でいます。

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