呼吸の役割について「呼吸は吐いてから吸うものである」

 あなたは呼吸の仕方を教わったことがありますか?
 ほとんどの人は教わったことがないとお答えになるでしょう。ましてや、心と体の調和のために呼吸を利用する方法論に至っては、教えられたことはないはずです。しかし、我々は絶え間なく呼吸をしています。
 呼吸は無始無終の連続運動であります。大きく深呼吸して下さいというと、まず息を吸うことから始めるひとが多いのではないでしょうか。つまり、呼吸が吸うことで始まり、吐くことで終わるものだと思っている人が多いのです。
 しかし、「呼」とは吐くことであり、「吸」とは吸うことであります。我々は生を得て、オギャーと泣きながら息を吐き、この世に誕生します。反対に、生を終わる時には息を引き取るといわれる如く、息は浅く小刻みになり、最後には吸いながら死んでいくものです。
 呼吸とは人間が生活を営むために必要不可欠なものであります。呼吸の仕方は生命の維持に深く関わっており、浅い呼吸は代謝を低下させて自然治癒系の効率を下げてしまいます。心臓血管系をはじめとする体のすべての器官系と同じように、脳神経系のはたらきも酸素と二酸化炭素との適切な交換に依存していることはいうまでもありません。
 そして呼吸は、そのすべてに影響する主要機能であるといえます。浅い呼吸、つまり呼吸制限は過去の身体的・感情的なトラウマ(外傷)、呼吸筋などの慢性筋肉疲労に由来するものであります。
 ここで大切なことは、五臓六腑を我々は自由に自分の意志で動かすことはできないということです。例えば心臓を自由に止めるとか、肝臓、腎臓、胃などの働きをゆっくりさせるということは、自分の意思に無関係であり、自由にコントロールすることはできないのです。しかし、肺は呼吸によりある程度自由意志によって使うことができる唯一の臓器であり、器官機能であります。
 漢字とはよく考えられているもので、「息」とは字のごとく「自分の心」と書き読みます。つまり、自分の意志を自分自身の五臓六腑に伝達させる唯一の窓口といって過言ではないようです。このことからも体の健康、心の健康に、息が大いなる役目を果たしている可能性をうかがい知ることができます。
 また、別の観点からは、心身の健康の出入口という考えのもとに、気功とかヨーガの訓練には必ずといってよいほど、呼吸法が取り入れられています。
 以上のような理由からも呼吸が大切であると考えられますが、人間の呼吸のルーツについて考えると(宗教的には人間は人間のまま存在したいう人もおられるようですが)純粋に学問的には、人間の祖先は、五億年前にさかのぼれば「ムカシホヤ」と呼ぶ、エラ穴を持った口の袋だけでできた生命体で、この口の袋がひとの顔、首、胸、腹に進化したといわれています。
 よって、呼吸法や口の使い方は当然、全身に影響し、健康のキーポイントになることは想像に値します。そうした理由から、次回から自然治癒力を高める呼吸の役割について述べたいと思います。

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