週刊プレイボーイ50号「静電気特集記事」の取材記事

■この冬こそ静電気で死んだりしないかおびえる人たちに捧ぐマジメな特集
 冬の恐怖、静電気のバチン。その静電気があまりにひどすぎて「死ぬのでは」とまで悩む3人がここに集まった。早速、その悩みを聞いてみよう。
ウチヤマ「家の鍵を開けるとき、毎回火花が見えるくらいの静電気がくるんだよ。万一、家の中でガス漏れしていたら爆発……と、いつも命がけの帰宅!」
ワタナベ「この季節、飼い猫に触るたびにバチバチ静電気がくるんです。猫ちゃんにもし何かあったらと思うと(泣)」
トダ「僕はトイレで手を洗うのが憂鬱です。自動で水が出てくるタイプの蛇口。冬になると絶対バチン!! ときません?」
一同「あるある……」
 と、かなりお悩みの様子。では、そもそも静電気はなぜ起こるの? 昭和大学医学部客員教授の堀泰典氏に聞いてみた。
堀「一般的に『静電気』と呼ばれている、冬場『バチッ』となる現象は、正確には『火花放電』といいます。これは体の表面にたまっていた静電気が金属などに触れて一気に放電されることで起こる現象です」
トダ「体に静電気がたまるとは?」
堀「静電気は物体同士が摩擦することで発生します。人の体に帯電する場合は、着ている衣類と皮膚の摩擦が最も大きな原因となりますが、指とPCなど、あらゆる摩擦によって静電気は発生し、体にたまります」
ウチヤマ「冬に起こりやすいのはなぜ?」
堀「空気が乾燥しているからです。水は電気を通しやすいので、湿度が高い季節は体から空気中に自然と放電できるのですが、湿度が低いと静電気が逃げ場を失ってしまうからです」
ワタナベ「特にドアノブやエレベーターのボタンなどで起こりやすく感じるけど?」
堀「指先で触れる場所だからですね。静電気はとがったところ、例えば指先から集中して放電されるので、強い電流が一点に流れ、痛みを感じます。逆に、手のひらなど広い面で触れると静電気の痛みは感じにくいです」

■すぐに使える静電気対策とは!?

 次に静電気対策のお話を。彼らは特別に何かしているの?
ウチヤマ「エレベーターのボタンを押すときはエルボーだね」
トダ「自分は誰かがボタンを押してくれるのをじっと待ちます。ドアノブも誰かが開けた瞬間に一緒に出ます」
ワタナベ「みんな明らかに不審です」
堀「お悩みのようですね……。先ほども言ったように静電気は一点から集中して一気に放電されると痛みを感じるので、体に帯電している静電気をゆっくりと放電させてあげる必要があります。ボタンやドアノブを触る前に、扉の木材部やコンクリートの壁を手のひらで1、2秒触るだけで放電は完了しますよ(次ページ右上の写真参照)」
ワタナベ「対策と言えば、私、静電気除去リングをつけているのに効果があまりなくて……」
堀「直接ドアノブなどにくっつけるタイプの静電気除去グッズは効果があると思うのですが、残念ながら、ブレスレットの効果は薄そうです

■服を変えてもムダ? 静電気体質とは

 続いて話は、なぜ同じ環境にいるのに、自分だけが被害に合うのかという恨み節に。
ワタナベ「寒さを我慢してまでニットを着ないようにしてるのに、それでもバチバチ……」
ウチヤマ「肌が乾燥してると起こるっていうけど、汗かいてるときでも起こるんだよね。あと、誰かに触れた時、自分だけ痛がってて相手は平気という不公平なことない?」
トダ「あります!! でも、お互いに痛がっても、ああこれはきっと僕の静電気のせいだ。ごめんなさいごめんなさい。とネガティブになっちゃいますよね」
 ……とのこと。静電気が帯電しやすい人、しにくい人がいるのはいったいなぜ?
堀「理由としては大きく服装・体質の2つの要素があります。服装に関しては、合成繊維を着ると静電気が発生しやすくなってしまいます。天然素材であれば発生量を減らすことはできますが、麻とウールなど天然素材でも摩擦が起こりやすく、素材の組み合わせによって発生しやすくなる場合もあるので、完全な対策は難しいですね」
トダ「体質については?」
堀「まず、乾燥肌体質の人は静電気が逃げにくくなってしまいます。水分を多めに摂取することで改善できますが、ハンドクリームで一時的な対策も可能です。また、汗っかきの人でも、汗の中に含まれるミネラルの量が少ないと、皮膚からの放電率が下がってしまいます。野菜ジュースなどミネラルが多く含まれる水分を採ることで改善が可能ですよ」

■心臓発作、爆発……。静電気は命に関わる!?

 そして、話は命への影響にまで及ぶ。
ウチヤマ「一番怖いのは、ガソリンスタンド。静電気除去シートですら自分の静電気を逃がすには不十分なんじゃないかって思う。触れた後でも、常に爆発の心配をしてしまうよね」
 そこで、総務省消防庁の広報に聞いてみると。
消防庁「昭和34年に『ガソリンスタンドの顧客が自ら給油を行う場合は放電プレートに触ること』という法令が定められて以降、静電気が原因で火災が起こった記録はありません。ただし、海外では静電気が原因でガソリンスタンドで火災が起こった事例もあるので、必ず放電プレートには触るようにしてください
ワタナベ「よくネットとかで、静電気が起こるのは体調不良のサインと言われてますけど、あれって本当なんですかね?」
ウチヤマ「うん。俺も持病の不整脈は静電気の影響じゃないかと思ってる」
 前出の堀氏はこの不安に対してこう答える。
堀「普段から静電気をためている人は血流が悪くなっているので、様々な体調不良を引き起こす可能性が高いです。肩凝りや冷え性、さらに不整脈やがんにつながることも考えられます。さらに、体内に帯電した静電気が神経細胞を攻撃することでアルツハイマーなどの認知症を引き起こす可能性も考えられます。こまめに金属やコンクリなどに手のひらで触れて、放電をしてください」
 最後に、こんな不安も。
トダ「静電気をくらったときの驚きって相当激しいじゃないですか。あれ、心臓発作起こさないですか?」
 循環器疾患専門診療所「海老名ハートクリニック」の院長・原田厚氏に聞いてみた。
原田「冬は血管が収縮しているため急な血圧の上昇で心臓発作が起こりやすい季節。可能性がゼロとは言えません。また、静電気によるストレスの積み重ねが冠動脈を詰まらせ、狭心症の原因になることも考えられます
 笑い話かと思っていたが、意外に怖い静電気。みなさんもこの冬、対策は万全に!!

■被害者が本気で悩む静電気のギモンQ&A

Q.人と人の間で静電気が起こったときダメージの受け方に差が出るのはなぜ?
A.「人と人の間で火花放電が起こった場合は、お互い刺激量は同じはずなので、痛覚の個人差によるものと考えられます。また、人間同士で起こったとしても、皮膚と衣類の間で火花放電が起こっている可能性も考えられるので、その場合は一方の人間しか痛みを感じないこともあります。」(堀氏、以下同)
Q.静電気除去リングをつけても効果がないのはなぜ?
A.「リングやブレスレット型の静電気除去グッズは体の静電気を空気中に放電させる仕組みとなっていますが、空気中に放電できる量は、地面とつながった素材(壁など)に触れる場合に比べて微量。そのため効果が感じられないことも多いです」
Q.自分が帯電しているかどうかを確認する方法ってある?
A.「静電気が皮膚の表面にたまると立毛筋(りつもうきん)が収縮するため、寒くないのに鳥肌が立っているときは帯電している可能性が高いです。また、血流が悪くなるので、指先にかゆみを感じることもあります」
Q.静電気が起こりやすい人は雷も落ちやすい?
A.「静電気体質の人間に雷が落ちやすいというデータはありませんので安心してください。統計的には、雨や汗などで濡れている人に雷が落ちることが多いようです」

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