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温泉研究 No.9 特集1基調講演「温泉と健康・長寿」

og1 温泉学会 代表 竹下 賢 編集・発行
「温泉研究」2012年9月1日発行

特集1:基調講演 「温泉と健康・長寿」

og2  古今東西を問わず温泉は湯治場として親しまれ、また多くの温泉病院も設立され成果を上げている。つまり、経験的に温泉が人を癒す効果があることは広く認知されていると言える一方、温泉が人体に対してどの様な有効作用を発揮するのかは完全に解明されていない。現時点で考えうる可能性としては、1.環境的要因(酸素の多い環境、森林浴)、2.筋肉の弛緩、3.精神的リラクゼーション効果、4.ミネラルの経皮摂取、5.ヒートショック蛋白質の活性化、6.静電気の除去作用、7.免疫細胞の活性化、その他、食事として、(8)アミノ酸の摂取、(9)ビタミンの摂取、(9)抗酸化物質の摂取などが挙げられる。以下にそれぞれのアウトラインについて概説する。

1.環境的要因(酸霧の多い環境、森林浴)

 温泉はおおむね自然が多い環境にある場合が多く、森林浴や散歩を通じて酸素をより多く取り入れることができる。その酸素は細胞内のミトコンドリア(図1)で利用されることになる。
 ミトコンドリアは細胞の中で好気呼吸により、エネルギーを生産する小器官であり、糖や脂肪を材料としてATPを生産する。ATP生産にはビタミンC、B群が必要であり、またミトコンドリアは独自のDNAを持ち分裂増殖する。一つの細胞内には数十から数万個のミトコン ドリアが含まれる。
 ミトコンドリアはアポトーシスに重要であるが、癌細胞にはミトコンドリアが少ない。また、エネルギーの生産としては、好気的呼吸(解糖)と嫌気的解糖があり、好気的解糖では、グルコース(C6H12O6)+602+38ADP+38Pi→6CO2+6H2O+38ATPの反応により1個のグルコースから38個のATPが生産されるが、ミトコンドリアを利用しない嫌気的解糖ではグルコース(C6H12O2)+2ADP+2Pi(リン酸)→2C2H5OH+2CO2+2ATPの反応により、1個のグルコースからわずか2個のATPが生産されるに過ぎない。そのため、酸素を用いた好気的呼吸がATP生産の主役であり、有酸素運動がミトコンドリアを活性化させるために望ましい。(深呼吸や有酸素運動はミトコンドリアの増殖と活性化に有効である。)

2.筋肉の弛籠について

og3  筋肉の弛緩の方法としては、直圧(揉むこと)、ストレッチ、バイブレーション、加温がある。加えて、細胞レベルにおいて昨今言われる細胞の糖化が健康維持にとって大問題であり、この糖化を防ぐためにも筋肉の弛緩が有効的と言われている。具体的方法としてストレッチ体操や坂道の散歩、ヨガ、太極拳(呼吸法+ストレッチ)を行うことが有効である。また、その他の方法として、筋肉に直圧やバイブレーションをかける等の方法もある。
 特に呼吸筋群の弛緩は呼吸をゆっくりとさせ、呼吸回数を減らす。さらに呼吸と心臓はある程度、運動しているため、呼吸がゆっくりしている方が心臓の打つ回数(拍動数)が滅る。つまり「長い息は長生」ということになる。
 ゾウの時間・ネズミの時間では、動物の心臓の打つ回数は一生で20億回ともいわれ、各々の寿命は1分間に打つ拍動数による。そういった観点から、信長いわく「人生わずか50年」は「当たらずといえども遠からず」である。現代人は暑さ寒さやその他の肉体的ストレスを軽減して寿命を延ばしているのかも知れない。

3.積神的リラクゼーション効果について

 ストレスには色々な学説があるが、もっとも有名なのがハンス・セリエのストレス学説である。この学説ではストレス状態は主として内分泌系、特に脇下垂体、副腎皮質系が関与し、ある種の心臓血管系、腎臓、関節等の疾患の原因に深い関係を有しているとしたことは有名である。概ねその反応は、大脳旧古皮質に由来するものであるといわれている。
 ストレスが加わり、精神的にイライラすると視床下部を刺激し、副腎皮質ホルモンの分泌を促進し、さらに、不安のホルモン(アドレナリン)、怒りのホルモン(ノルアドレナリン)を分泌させる。このことは交感神経を興奮させることと同じ効果をもたらす。その結果、血管が収縮して血液の流れが悪くなり、心臓血管系、腎臓、関節等に影響するというものである。
 その他、交感神経優位による血管の収縮は筋肉を緊張させて悪影響を与える。例えば、これにともなって血糖値も上昇するので糖尿病の人はストレスを避けることが大切である。
 ストレスの緩和には脳波の安定やβ-エンドロフィン、エンケファリンなどの脳内麻薬の分泌を増加をさせることが重要である。また、リズミカルな運動もよい。例えば貧乏ゆすり、自転車、歩く、ヨガ、太極拳、ガムをかむ、などによりセロトニンの分泌が優位になり、その結果、体液循環や免疫も高まることになる。運動ではランナーズハイも同じようなメカニズムに基くと考えられる。
 「喜べば、喜び事が喜んで、喜び事を喜びながら連れてくる」「悲しめば、悲しみ事が悲しんで、悲しみ事を悲しみながら連れてくる」という。常に喜ぶ心を持ち「ありがとう、嬉しいです、幸せです、お陰様です」など、気持ちいい言葉、温かい言葉を元気よく吐くことが大切である。
og4  また、歴史的には徳川家康の七十五歳よりも長生きした戦国武将が何人かいる。今川氏真は享年七十七、島津義久は享年七十八、武田信虎は享年八十、宇喜多秀家は享年八十三、松平忠輝は享年九十二らである。彼らに共通する点はいずれも争いに敗れてリタイアした人物である。彼らの長寿の秘訣は負けたというストレス以外はストレスをためていないことではないだろうか。それほどストレスの緩和は大切であると考えられる。
 ストレス緩和の一つ方法として、温泉につかり、のんびりしたという気持ちが脳波の安定、β-エンドルフィンなどの脳内麻薬様物質の分泌を増し、ストレスを緩和し、免疫力を高めるのに役立ち、その上、交感神経と反対の作用を持つ副交感神経の優位の状態を作り出し、筋肉や血管を弛緩し血行促進、筋肉弛緩に役を担うことは言うまでもない。

4.ミネラルの経由摂取について

 皮膚(図2)は直視できる最初の臓器であり、紫外線をはじめ、温度、湿度、細菌や毒物などの外界からの有害刺激の遮断にとどまらず、汗、脂肪酸などを分泌し、排泄する機能を有している。従来、皮膚からの物質の吸収は殆どないとされてきた。しかしながら、1960~70年代、洗剤による肝臓、脾臓、腎臓能障害や、2011年に石鹸に配合された加水分解小麦粉によって、小麦に対するアレルギーが発現し、小麦製品(パン、うどん等)が食べられなくなった事例が1500件以上報告された。また、スマトラ島沖地震(2004年12月26日)の大津波で、日本人や外国人女性のご遺体の腐敗速度が他に比べて明らかに遅く、遺体の判別が容易であったという。このことは、化粧品などに含まれる防腐剤パラベン、エデト酸などの防腐剤が身体に残留していた可能性は否定できないと現地の法医学者が唱えている。
 このように皮膚は外来異物の侵入に対する最も重要な防御機構ではあるものの、その作用は完璧ではなく、条件によっては異物の侵入を許すことが再認識されてきている。
 つまり、分子量600以下は経皮吸収されるので大変危険である。メチルパラベンは分子量が152.15、エデト酸は分子量314.226であり、殆どの防腐剤は分子量600以下で経皮吸収される。また、親油性の高い物質は脳血流関門を通りやすく、界面活性剤入りの化粧品は認知症を助長する可能性を否定できない。特に基礎化粧品は皮膚に直接触れるので要注意と考えられる。
og5  特に皮膚から吸収されると、胃の酸や腸のアルカリで分解されることなくダイレクトに影響し、症状が重篤に経過する場合が多いので小麦分解物、パラベンをはじめ界面活性剤やその製品である洗剤などについては要注意である。うつ病や認知症は女性が男性の約1.8倍の罹患率である事実は化粧品の防腐剤などの経皮吸収と無関係とは言い切れない。その反面、経皮からの吸収を利点としてとらえ、現在ではニトログリセリン等、素早く効果を届けたい薬などを、経皮吸収パッチとして活用されているように、温泉にゆっくりつかることにより、ミネラルを経皮から吸収させることは大変重要な要因であるといえよう。自分に合う成分の温泉を選び、温泉にゆっくりつかり、ストレスを抜くことをお勧めする。ミネラル欠乏による健康障害の(図3)を参照のこと。
 ミネラルの摂取は野菜や根菜類を始めとする植物性ミネラルを食することにより摂取するのが良い。ノーベル賞を2度取得したライナス・ポーリング博士が、「全ての病態、全ての病弊、全ての病気を追求すると、ミネラル欠乏にたどり着く」と唱え、マクガバンレポート(上院レポート)264号では、「ごく少量にもかかわらずミネラルがないと我々は病気になり、苦しみ、命を縮めることになる」と指摘している。
og6  現代人のミネラルの摂取は、加工食品の普及、農法そのものの変化に伴う野菜含有ミネラルの減少により、全般的に不足しがちである。軽度なミネラルの欠乏症の場合、殆どが「なんとなく調子が悪い」程度にしか感じられないため、慢性的な欠乏となることが多く、糖尿病や心疾患などの生活習慣病のリスクを高める可能性がある。つまり糖尿病、心疾患をもつ人はミネラルの摂取を心がけると、改善される可能性が少なからずあるので心がけて頂きたい。温泉水の飲用習慣はミネラル摂取を目的とした古くからの知恵とも考えられる。ミネラルは経口吸収でも、経皮吸収でも同じ効果を発揮する。
 また、ミネラルの欠乏症として、ヨウ素欠乏による甲状腺腫や鉄欠乏による貧血がよく知られており、ミネラルの働きは酵素活性の基軸になることが知られている。ミネラルは約100種類あり、そのうち、必須ミネラルは現在、カルシウム(Ca)、リン(P)、カリウム(K)、硫黄(S)、塩素(Cl)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、セレン(Se)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ヨウ素(I)の16種類とされているが、実際には必須ミネラルをはじめ70種類以上のミネラルが相互作用しながら働き、生命活動の基本ともいえる総ての酵素活性(酵素は3500~5000種あるといわれる)に必要と考えられている。
 例えば、Mgは350、Znは250、Mnは220、Cuは15類の酵素活性に役立っている。神経ではK、Ca、Mgは天然のトランキライザー、俗に言う精神安定剤であり、すぐにキレル子供はK、Ca、Mgの摂取不足が考えられる。SODの活性化にはZn、Cu、Mn、Fe、Niが必要であり、酸化的損傷から有機体を保護をするグルタチオンペルオキシダーゼにはFe、Mn、Cu、Seが必要で、さらに胸腺の強化にはZnが、DNA修復酵素の活性化にはZn、Mgが必要とされる。赤血球のへモグロビンではヘモという鉄とグロビンというタンパクを結合させるのにCuが重要な働きを持ち、骨のCaはMgがないと沈着しない。
 また、解毒酵素であるシトクロムP450(450ナノメートルの可視光領域の波長を持つ電磁波に対し吸収を示すピグメント(色素)450)は約500のアミノ酸残基からなり、活性部位にヘム鉄を持ち、保存されたシステイン残基と水分子がヘムの鉄原子にリガンド(特定の受容体に特異的に結合する物質)として配位する。そのため、解毒においてもミネラル(Fe)の存在がないと解毒能力が落ちることになる。
 奥出雲町の温泉は炭酸水素ナトリウム、炭酸イオンが豊富で疲労回復効果が期待できる。また、硫酸化イオン(硫酸カルシウム、硫化鉄、硫酸マグネシュウム、硫酸カリクム、…)が多く、肌に良く美肌効果が期待できる。

5.熱作用によるヒートショック蛋白(HSP)の生産について

 生体温度が1~10度上がると特別な蛋白質を作り始める。この蛋白質は分子量10~100kDa(統一原子質量単位)の蛋白質である。換言すると、HSPは「温めると細胞の中で増加する物質」であり、おおむね39.0度以上の体内環境で作られる。この蛋白質は老化防止や免疫力の強化、癌や心不全などの病気の予防のほか、若返り効果も期待できることが知られている。
og7  HSPは細菌から人に到るまで普遍的に作られ、細胞内では分子シャベロン(他の蛋白質の構造化を助けるが、自らはその最終成分にならない蚕白質)として機能する。各生物によって生産されるHSPは、構造的に類似性が高く、免疫系が異物と認識して、アレルギー反応を惹起する場合があり、アレルゲン原として作用することがある。しかしその反面、HSPは樹状細胞ゃMΦに認識されサイトカイン(TNF-α、TNF-β、LT-βなどに代表され、リンパ球の増殖や単球の機能に作用する蛋白)を介して免疫系を活性化させる事が報告されており、体温を1度上げると免疫力が5~6倍に上がり、反対に1度下がれば30%減になると言われる。つまり、身体を温めることが大切であり、温泉を活用することは免疫力の向上の観点からも望ましい。このように、免疫の活性化にはこの蛋白によるところが大きいと考えられている。
 近年、HSP70は抗細胞死作用や抗炎症作用を持ち、アルコールや紫外線など種々のストレスに対し細胞を保護することが報告され、脳梗塞の修復時にも関与するといわれる。ミトコンドリアにあるHSP祐なども同族である。HSPを含め、蛋白質はリボソームで作ら れる。
 HSPは病気の起因となっている異常蛋白質の構造化を正常化し、分子シャベロンとして働き、病気を治す働きをする。風邪をひいた場合などに体温が上がるのはHSP蛋白を作り免疫力を上げるためであると考えられる。(できれば、暇があったら、温泉、日光浴、湯たんぽ、こたつ、暖房、脇の下のホカロンなどを活用し温めるのがよい。)
 また、癌の場合は温熱による殺癌細胞効果の他に免疫能の亢進が認められる。正常細胞は熱ショックがかかると、HSP72でセントロゾームの構造崩壊の防止をする。しかし、癌細胞はHSP72を持たず、タンパク質保護能力低下が起こりセントロゾームの構造崩壊や細胞周期停止機能が動かず細胞修復が行えず熱に弱くなり温熱療法が有効という事になる。
 その他、P53(Pは蛋白質(protein)、53は分子量53,000を意味)は癌抑制遺伝子の一つであり、細胞が癌化したときアポトーシスで癌の消滅に働く。つまりP53の槌能不全は癌化の可能性を高める。正常細胞は熱ショックがかかると、細胞が傷ついた場合にP53が生産されて細胞周期を停止させて細胞修復を行い、その結果として熱に強いということになる。
 バセドウ病(甲状腺機能亢進症)、リュウマチ熱などの熱が出る病気の人は、「癌」になりにくいと言われるのはこの蛋白によるところが大きいと考えられる。

6.静電気の除去について

og8  赤血球は中心部がうすい円盤状をしており、血液の血漿成分の圧力によりパラシュート状に変形、折れ曲がる(図4)。そのため、赤血球よりも内径の小さい毛細血管を容易に通過することができるが、血漿の状態が悪いとその影響をうけ、赤血球も硬質化して変形困難となり毛細血管を通過しにくくなる。そのため、常に血漿成分中のミネラル、アミノ酸、ビタミン、抗酸化物量を一定に保つ必要がある。また、体内静電気の発生については、血管内を血液が流れるとき、赤血球、白血球、血小板等が擦れ合ったり、血管壁とぶつかったりした結果、静電気が発生するものである。
 血管は動脈、毛細血管、静脈を1本につなげると10万km(地球2周半)あるといわれる。血液の量は男性で約8%、女性で約7%であるから、60kgの男性の場合は60kg×0.08で4800gが血液ということになる。血液の比重は1.053以上と一定であるので量にすれば4800g÷1.053で4,537ccということになる。
 1分で心臓の拍動は約70回、1回の抽出量=約70cc、1分で4900ccを押し出すことになるので1分足らず(55.6秒)で心臓の血液はカラになる計算になる。これは約1分足らずで10万kmを流れるスピードということになる。秒速で1.798km、時速約600万km以上(6,474,820km)ということになる。これは流れ星の51倍以上のスピードである。流れ星は空気との摩擦熱でほとんどが燃え尽きるほどの高熱になるように、血管内を血液が流れるその時に発生する静電気は莫大である。
 現実は、ある太さの血管が、同じ太さの2本の血管に分かれた場合、流れる管の断面積は2倍になる。つまり、流速Vは、流量Qを断面積Sで割ったV=Q/Sの閲係になり、Sが倍になると、Vは半分になると考えてよい。端的に言うと、血管が600万本に分かれたら血液のスピードは時速1kmになり、6000万本に分かれたら時速100mに、6億本に分かれたら時速10mに、60億本に分かれたら時速10cm、600億本に分かれたら時速10cmになる。毛細血管の直径は5~20μ(ミクロン)で赤血球の直径は約8μでバラシュート状や折れ曲がりながら運搬されるので、毛細血管壁と衝突する赤血球は常に存在する。(図5)参照。
og9  血管が枝分かれしているので血流はゆっくりとなる一方、人間の体は閉じた系である。エネルギー保存の法則はある閉じた系の中のエネルギーの総量は変化しないというものである。血液は、体内という閉じた系で循環し通常は、そこから漏れだすことはない。汗をかいたり、呼吸をしたり、エネルギーを少なからず交換しているので厳密には閉じた系ではないが、概ね、身体は閉鎖系と考えて問題ない。人体という閉じた系であれば、無数に血管が枝分かれしていても、さきほどの仮定のようにすべての血管を繋いだ時と体内で生じるエネルギーの総和は同じである。つまり、私たちの体の中では、血液が10万kmの血管を流れるときと同じだけのエネルギーが生産されている。当然、体内静電気も大量に発生していることになる。これに異議を唱えることは、ニュートン力学以来の現代物理学を否定することである。
 本来、赤血球はバラけているものである。(図6)参照。しかし皮膚は下記の帯電列(図7)に示される通り、概ね衣服と皮膚の問において皮膚はプラスに帯電することが多く、また、上記のように血液成分間の擦れ合いによっても静電気は発生する。血液成分は何 と擦れ合うかによりプラス、マイナスが変わるが、赤血球表面にプラスの電荷をもった場合、一部の赤血球表面のシアル酸のマイナスの電荷(図8)を無くし、赤血球の表面の電荷が、マイナス、±0、マイナス、±0と順次凝集することがある。(図9)参照、俗に言うネバネバ血液である。
 例えば、ホコリは空気と接すると空気はプラスに帯電しやすくホコリはマイナスに帯電する。マイナスに帯電したホコリは電気的にプラス乃至、電荷を持たないものに引き寄せられ集まり積もることになる。これと同様に赤血球は引きあい、凝集し、毛細血管をふさぐ場合がある。
 このような現象は冬の朝方に、睡眠を多く取った時に起こる可能性が増大する。これには、血液中の水分の蒸発により、血液が濃くなること、交感神経が優位になり血管が細くなることが関与すると考えられているが、加えて、静電気により赤血球が電荷を失い、マイナスの電荷を持っている赤血球との結合を繰り返し、数珠状や塊状になることも、大きな要因となっている。
og10  毛細血管の直径は5~20ミクロンであり、赤血球の大きさは8ミクロン前後であるから、当然、赤血球の結合・凝集は毛細血管の通過を困難なものとし、酸素の運搬も阻害される。この現象が高度に惹起された場合には、赤血球は数十個つらなり、脳梗塞、心筋梗塞を起こす可能性を助長することになる。また、水は極性を持っており体内静電気がプラスの場合はマイナス側の酸素側が、体内静電気がマイナスの場合はプラス側の水素側が引っ張られ易く浮腫みやすい。(図10)参照。
 一般に大地は0ボルトであり、温泉は大地と連続している場合が多く、温泉浴は、静電気を抜く方向に作用し赤血球の凝集を防止する良い方法である。
 温泉の効能効果は、これらのことを勘案すると、ストレスを緩和し、多種類のミネラルを経皮吸収して酵素を活性化し、さらに、HSP蛋白の生産を促し、免疫力を上げることにあると考えられる。さらには、静電気をアースし、赤血球の凝集の防止効果であろう。以上のことは健康の増進と長寿に新たな可能性を開くものであると考えられる。
 現代の生活はワラジの生活ではなく、絶縁体であるゴム底靴の多様により静電気を常にアースしにくく、それ故に体内静電気は血管壁や赤血球の細胞膜などに溜まることになる。
 アトピーの温泉療法も、体内静電気除去が関与すると考えられる。

7.癌棚胞の活性化について

 免疫細胞の活性化は、寿命を迎えた各種細胞などの消化促進、並びにリンパ球に対する抗原提示や刺激を行う免疫の司令塔であるMΦ(マクロファージ)を活性化させることとなり重要である。
 活性化の方法としてはミネラルやビタミンCの大量摂取や電離放射線ホルミシス効果が考えられる。ホルミシスとは何らかの有害性を持つ要因について、有害となる量に達しない量を用いることで有益な刺激をもたらすものである。例えば、紫外線ホルミシスのように紫外線は浴び過ぎれば皮膚癌の原因になり、殺菌灯は紫外線の殺傷力で細菌を死滅させる働きがある。一方、少量の紫外線は活性ビタミンDを体内で作るために必要である。活性ビタミンDは血清中のカルシウム濃度を調整し、クル病の予防をするなどの効果がある。これを紫外線ホルミシスという。
 紫外線ホルミシスと同様に電離放射線ホルミシスは1978年、ミズーリ大学のトーマス、D、ラッキー教授が提唱した。低線量の放射線照射は生物の成長・発育の促進、繁殖力の増進及び寿命の延長という効果をもたらすという。
og11  その範囲は人により異なると考えられるが、年聞5~100mSvの線量で、ホルミシス効果が現れると思われる。200mSv/y以上は、個人差があるため、悪性腫瘍(白血病…)の発生を懸念される。ホルミシス効果を得るためには個人により効果に差があり注意が必要である。
 電離放射線ホルミシス効果の最たる働きは、(1)SOD活性の増加、(2)総GSH濃度の上昇(還元型グルタチオン)、(3)GPx(グルタチオンペルオキシダーゼ)の機能増強、(4)カタラーゼ活性の上昇、(5)DNA修復活動の活性化、(6)p53癌抑制遺伝子の活性化、(7)免疫細胞の活性化、などが考えられる。電離放射線による作用を(図11)に示す。
 その他、免疫系の重要な物としてMΦがある。MΦは免疫システムの一部をになうアメーバ状の細胞で、生体内に侵入した細菌、ウイルス、又は死んだ細胞を捕食し消化し、食べたものの情報を細胞表面に出し、戦いの相手は何かを、へルパーT細胞に提示する抗原提示を行い、尚且つB細胞による抗体の作成に貢献する。別名大食細胞、貪食細胞ともいう。この働きは免役の開始に大変重要であり、それ故、これらの細胞は免疫システムでは司令塔の中心的役割をするものである。MΦや樹状細胞はB細胞による抗体の生産、骨髄における赤血球の生産と成熟、各種サイトカインの放出、など様々な役割を果たす。
 血液中の単球は、前駆細胞から分化し血管外の組織や体腔に遊走し、そこで組織固有のMΦである組織球となる。またMΦと同様の作用を有する樹状細胞も免疫システムの中心的役割を担う。単球は20~30μm、MΦは20~50μmの大きさで、寿命は単球が1日以下(5h)から数日で血管外に遊走する。MΦ、樹状細胞は数日~数か月、時には数年におよび生き続ける。
og12  癌の獲得免疫療法では癌を治療する時に組織球や樹状細胞は重要な役割を担う免疫細胞であり、癌内で癌を助けるMΦと逆に癌を攻撃する「癌傷害性」のMΦがおり、当然、癌傷害性MΦや単球が活発に活動しているほうが望ましい。単球を(図12)に示す。単球やMΦは免疫強化に非常に大切な細胞である。また、ミネラル、アミノ酸、ビタミンの摂取も赤血球をバラケさせ、単球を活発化すると考えられる。(図13)に示す。またミネラル、アミノ酸、ビタミンの摂取と15mSv/yのホルミシス効果による単球の活性化を(図14)に示す。
 また、アルントシュルツの法則として、弱い刺激は生理的活性を高めるが、強すぎる刺敵はこれを妨害し、時には停止させる。「少量の毒はOKだが、多量の毒はNG」の考え方がある。
og13  内臓体壁反射とは、体の中の具合の悪い内臓と、その場所と関連がある皮膚に反応が出る「内臓体壁反射」で、経穴(ツボ)と合わせて刺激することで症状が軽減や回復する場合がある。温泉の成分や化粧品の成分の働き、温泉の成分(ミネラル)や化粧品の成分(ビタミンC)など、健康によい成分を皮膚から吸収できれば、体質改善が期待できる。言い換えれば、化粧品の防腐剤は避けた方がいい。また、酢(酢酸)も酸化剤であるため、酢を飲むのは、少量(オチョコ1杯15cc)は薬、多く(コップ1杯)は毒という事である。
 その他、食事として(8)アミノ酸の摂取、(9)ビタミンの摂取、(10)抗酸化物質の摂取が挙げられる。
 先にも述べたが、ミネラルを多く取る方法として野菜や根菜類を食することであるが、窒素(N)は腎臓に注意が必要である。窒素肥料を過剰に与えた根菜などに含まれる亜硝酸(HNO2)の摂取は注意が必要である。亜硝酸がヘモグロビンと結合するとメトヘモグロビン血症がおこり呼吸困難になることがある。亜硝酸は分解すると一酸化窒素を発生し強い血管拡張作用で、脳貧血、めまい、低血圧、やメトヘモグロビン血症をおこすことがある。亜硝酸は物性蛋白やニコチンと反応しニトロソアミンという発癌剤になることがある。ヒューミックシェルはアメリカ、エミリー郡、約1億2,700万~7,000万年前のミネラルリッチな古代植物堆積層で地中深くに埋蔵し、大気汚染や殺虫剤、除草剤にさらされておらず、カルシウム・鉄・など70種類以上(84~100種類)のミネラルを含む植物性ミネラルで有効性の高いものである。
 抗酸化物は活性酸素であるヒドロキシルラジカルHO・、スーパーオキシドアニオンラジカルO2-、ヒドロベルオキシルラジカルHO2・、過酸化水素HOOH、一重項酸素1O2、一酸化窒素NO、二酸化窒素ONO、オゾンO3、過酸化脂質があげられる。
 活性酸素は平素から1日に細胞1個あたり約10億個発生する。即ち体全体で60兆個~90兆個×10億発生していることになる。
 激しい運動、食べ過ぎ、飲みすぎ、紫外線、タバコ、ストレス、炎症、放射線被爆は活性酸素の発生を増しDNA揖傷が増える。それに伴い抗酸化機能が増すことが細胞レベルで証明されているが、抗酸化物質を取ることは必要である。
 抗酸化物質として赤ワイン、リンゴ、イチョウの葉、キノコ、緑茶などがあげられる。つまり、赤、緑、黄色、黒、など濃く、鮮やかな色の食物が良い。ビタミンB群とはビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種の水溶性ビタミンの総称で補酵素として機能する。ビタミンC、B群は食物をエネルギー(ATP)に変える手助けに必要である。
 また、ビタミンバイブルにも、ビタミンは重要であるがミネラルがないとビタミンは吸収も機能もできないと唱え、このような知見に基づいて、栄養学の主役はミネラルであると記されている。
 昨今、日本人の一生の平均的医療費は2400万円である。医食同源に心掛け、ミネラル70種類以上、アミノ酸(必須アミノ酸)、ビタミンB、Cなど、抗酸化物質(ワイン、イチョウの葉のお茶、緑茶など)を摂取し、予防医学に心がけ医療機関にかからなくてよい身体を作るように心がけることが望ましい。
 昨晩、核酸と悪性腫精(癌)について質問されましたので私の見解を申し述べる。
 人間は食物連鎖の頂点、良い物も、悪い物も、総て取り入れている。食物とは人を良くする物とかいて食物という。化学物質は略して化物(バケモノ)という。山のように盛った化物を三人分を口にすると病になるその病気を癌という。8大栄養素ぱタンパク質、炭水化物(糖質)、脂肪、ミネラル、ビタミン、食物繊維、抗酸化食品、核酸である。
og14  癌の栄養素の主要な物は核酸が考えられる。癌がみつかったら核酸の飲食を控える。サケの白子、タラの白子、フグの白子、及び、白子製品や白子の加工品も控えることが肝要と考えられる。
 また、癌はスキルス癌のようにものすごく速く成長する癌を除き、癌の成長はサイコロ大になるのに9年から27年を要する。この間に知らず知らずの核酸の摂取は命取りにならないとも限らないので、要注意と考えられる。
 〈網胞レベルの健康維持の精讀〉
食物として(1):70種類以上のミネラル、(2):ビタミンC、B群、(3):アミノ酸、(4):抗酸化物質 を充分に取る。
 外部環境として(5):36℃以上の温熱、(6):放射線ホルミシス(ラジウム温泉、ラドン温泉…)を与える。
 内部環境として(7):体内静奄気の除去、(8):鼻呼吸(ゆっくりした呼吸+有酸素運動)、(9):筋肉の弛緩などが挙げられる。
 温泉は外部環境として良い条件であると考えられる。

 謝辞
 この機会を与えて下さいました島根県奥出雲町の井上勝博町長、並びに温泉学会会長・竹下賢教授を始め理事の先生方に、深く感謝申し上げる次第であります。

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