堀先生のおべんきょう塾「パーキンソン病と脳について(2)」

左右の脳

 右脳は左半身を、左脳は右半身を支配する。
 大脳の左右の半球は2つが同じ働きをする事もあるし、片方に機能が集中している事もある。例えば、手足の運動の指令は、左右どちらの脳からも出すことができる。但し、右脳の指令は左半身へ、左脳の指令は右半身へと伝わっていく。これは、大脳皮質と皮膚や筋肉を繋ぐ神経が、脳の延髄で交差し、反対側に移るためである。また、言語機能のように左脳に集中している機能もある。
 我々には「利き脳」があり、人により左右どちらかの脳をよく使う。

利き脳

 生物の中で左右2つの脳を持つのは哺乳類だけで、左右の脳の機能が分化したのは人間だけである。
 生まれたばかりの赤ちゃんは、利き手がない。はっきりするのは2歳~5歳ぐらいである。それは丁度、片言ではない言語機能が身につき始めた時期に当たる。
 脳梁には2億本の神経細胞が走っていて、左右の大脳半球を繋いでいる。身体中の皮膚や神経に繋がる神経は延髄で左右が交差する。

脳の働きは左右で違う

 左脳:言葉や記号を使って、理論的に考える機能を持つ。聞く、話す、読む、書くといった言語に関する能力は左脳の働きによる。物事の後先、時間の概念が持てるのも左脳の働きによる。計算も左脳で行なわれ、九九の暗記でもわかるように、数字は言葉として認識されている。
 右脳:物事を直感的にイメージしたり、想像的な発想の感覚機能がある。一人一人の顔は少しずつ部分がずれているため個性ができる。そのズレを見分け顔を識別するのは右脳である。絵を描けるのも形を記憶する力が右脳にあるからだ。
 音楽を聴いたり、演奏する時は右脳が働いている。方向を直感的に理解することができる。空間の中で他のものと自分との位置関係がわかるのも右脳の働きによる。

小脳の仕組み

 大脳からの命令を受けて手足をスムーズに動かす働きをする。
 小脳は大脳にほとんど覆われており、重さは脳全体の10%程度(平均で男性135g、女性122g)で、文字通り小さい脳である。しかし、ここには脳全体の半分以上の神経細胞が集中している。大まかな運動命令は大脳から出されるが、小脳の回路でそれを細かく調整してから、全身に命令が送られる。そのため、微妙な運動もスムーズに行なわれる。また、体のバランスをとっているのも小脳である。小脳の働きが低下するとめまいが起こり、身体のバランスがとれなくなり、片足で立っていられなくなる。小脳は古い小脳(古小脳)と新しい小脳(新小脳)の2つに分けられる。

古小脳

 平衡感覚の中枢。姿勢を保つ働きをしている。この働きが低下すると、バランスが取れなくなり、正しい姿勢で立っていられなくなる。

新小脳

 サル、人の小脳はほとんどがこの新小脳で占められている。運動神経に深く関わっている部分である。大脳からの運動命令をここで細かく調節して全身に命令を伝えている。
 「小脳は時計」と言われるが、これは1つの運動を適切な時間で行なうことができるためである。
 小脳の機能が低下すると、ベルトコンベアで流れてくる目的物を取ろうと手を伸ばしても、触れずに行き過ぎてしまったりする。

小脳の神経細胞

 小脳の皮質細胞はとても規則正しい構造になっている。1mmに約50万個の神経細胞が回路を作り、コンピュータのように情報処理をし、小脳全体ではこのシステムが3万個あることになる。そのために複雑な運動も、たくさんの筋肉を調整して協調させて行なうことができる。

脳幹

 脳幹の重さは約200g。形も大きさもその人の親指に似ている。
 呼吸、心臓の活動、体温調節など脳幹により、眠っている時も心臓の働きを維持したりするための神経が総て集まっているところである。
 脳幹は間脳(視床、視床下部)、中脳、延髄、キョウからなり、大脳皮質の神経細胞の働きを調節して、体温調節や睡眠と覚醒のリズムを作る。
 生命活動をする総ての神経が集中し、体の隅々から脳に届く情報も、大脳から出て行く指令も総て、脳幹「命の座」を通過する。

  1. 視床は臭覚以外の総ての感覚を伝える神経線維の中継点。情報整理を行なう。
  2. 視床下部は約4gでホルモン系の中枢、体温、消化、睡眠を調整する機能。性機能の中枢。1+2=間脳。
  3. 中脳は体のバランスを保ち、眼球の動きや瞳孔の大きさの調節。
  4. 海馬は視覚、聴覚、触覚で捕らえた情報を一時的に貯える所。
  5. 橋は脳幹の中で最も膨らんだ部分。大脳皮質から小脳に向かう中継点。顔、目を動かす神経が出ている。
  6. 延髄はクシャミ、咳で異物の侵入を防ぐ。食事を飲み込む。呼吸、体液循環、発汗、排泄の中枢。

脳死

 脳幹の死を脳死という。
 脳幹はただ生きるに最低限必要な脳。大脳機能が脱落し、脳幹だけが生きている状態を「植物人間」という。脳幹が死ねば、まもなく大脳も死んでしまう。