堀先生のおべんきょう塾「呼吸について」

 呼吸とは吐いて吸う事の繰り返しである。赤ちゃんが生まれる時、「オギャー」と産声を上げて、息を吐きながら生まれ、息を引き取ると言うが如く最後は息を吸いながら人間は生を終える。
 五臓六腑のうちで、自分の意志では心臓をゆっくりさせるとか、消化液を多く出すとか、五臓六腑のコントロールは出来ないが、唯一、肺だけがある軽度自分の意志でコントロールできる臓器であり、呼吸を早くしたりゆっくりしたり出来る。もし呼吸回数を1分間に1回にすることが出来たなら人間の寿命はどの位なのだろうか?
 睡眠時に1分間の呼吸回数を18回、起床時で12回として、環境が良いと120歳まで人間は生きられる潜在能力があるといわれており、環境や潜在能力を最大限に出せたなら、理論上では120歳×12倍~18倍=1440歳~2160歳まで理論上は生きられることになる。
 もし、1分間に呼吸回数が3回ならその3分の1になる。(注意:五臓六腑にはすい臓が含まれていない。すい臓を入れると六臓六腑である。)それ程、呼吸は大切である。
 そこで、簡単に呼吸のメカニズムについてご説明しましょう。

※肋骨は前面の胸骨側が斜めに下がっているこの構造が素晴らしい。

1.まず赤ちゃんが生まれてくると、出産の刺激で赤ちゃんはストレスを受け全身の筋肉が緊張するため外気は殆ど入らない。次に体内にいた時に母親からもらった栄養分や酸素の老廃物を排泄する作業から始まる。そのうち二酸化炭素など気体の排泄時に筋肉の全身的な弛緩が行なわれ筋肉がのびて胸骨側が下がり肋骨内の胸空が狭くなり肺から空気が押し出される。そのときに声帯を刺激し泣き声、つまり、産声になる。次に最初の尿と便(グリーン色の便=宿便もしくは万年便という)がでる。
2.次に、息を吸おうとすると肋骨に付いている筋肉が緊張して縮み前の胸骨側を引っ張り上げる。
3.すると、肋骨は背骨に対して直角近い角度になり、胸の厚さが増して、肋骨の空間がふくらむ。
4.それに応じて、風船のような構造になっている肺がふくらみ、空気が吸い込まれる。
5.また、反対に筋肉を解くと、筋肉がのびて胸骨側が下がり肋骨内の空気はもとどおりに締まり肺から空気が押し出される。を繰り返すのである。

※横隔膜によるポンプの働きについて。(腹式呼吸:横隔膜も筋肉の一種類である。)
横隔膜は皿を伏せたような形をしていて、その上に肺が乗っており、これもポンプの働きをしている。
1.息をしようとすると横隔膜の筋肉が緊張して縮み平らに近い形になり、肋骨内の空気がふくらみ、風船のような仕組みの肺に自然に空気が吸い込まれる。
2.反対に筋肉の緊張を解くと、横隔膜は元どおりの形にもどり、肋骨内の空間は狭くなり肺の中の空気は外へ押し出されてしまう。を繰り返すのである。

※実際の呼吸の仕組み。
上記のように呼吸は肋骨の働きと、横隔膜の働きの片方だけでもすることが出来る。事実、静かに息をしている時は横隔膜の働きだけで呼吸をしている。ところが、激しい運動を始めると体内の組織が沢山の酸素を必要とするため、肋骨の動きによる呼吸が次第に多くなって腹式呼吸+胸式呼吸が加わるのである。

(結論):呼吸筋郡(胸鎖乳突筋、前、中、後、斜角筋)も横隔膜も筋肉であり、弛緩している方が胸空を広くでき肺活量が増し呼吸回数が減少する。呼吸回数と心臓の心拍数には相関関係が有り、呼吸数が少ないほど心拍数も少なくなる。つまり、心臓の一生に打つ回数は20億回、呼吸を1回する間に心臓は4回打つと生物体内時計が決められており、長い息が出来ることは心臓の心拍数を減少させる事になる。長寿の差は呼吸回数にあるといってよい。換言すれば、長い息は長生きにつながるのである。